どのようなビジネスでも、新規の顧客獲得は大きな課題となります。
そして、方法にも色々なものがあります。
例えば、自動車のセールスマンや保険の外交員は新規顧客開拓を日常的に行う職業の代表的なものですが、これらの人は名刺と商品説明のパンフレットを片手に個人や企業などを訪問していきます。
学習教材や先物取引であれば、名簿を参考に電話をかけまくり、とにかくアポイントを取ることを目指します。
ネットワークビジネスならば、説明会に参加してくれる人が潜在顧客になるため、参加者を募ります。
マスプロダクト(大企業が大量生産・大量販売する商品)ならば、テレビや雑誌などのメディアで宣伝して認知度を高めることが新規顧客開拓には不可欠です。
色々な例がありますが、キャバクラはどうでしょうか。
一般的な業種とキャバクラの違い
キャバクラが新規顧客を開拓する方法は、上記のような職業とは異なります。
なにしろ、セールスマンのように戸別訪問するわけにはいきませんし、潜在顧客に電話をかけまくることもしません。
新聞の折り込みチラシやTVCMで宣伝することもありません。
特にTVCMなどは論外で、ほとんどのキャバクラは店舗数が限られているため、宣伝を大々的に行ってもまず赤字になります。
そもそもキャバクラという存在が大衆向けの娯楽ではない(お金がかかる、女性や未成年には縁がないなど)ため、マス・マーケティングをする意味がないのです。こ
のような一般的な新規顧客開拓はやるだけ無駄でしょう。
それだけに、他の業種に比べると大きなハンデを負っているともいえます。
また、キャバクラという用語は大衆に認知されているのですが、実態はあまりよく知られていないというハンデもあります。
例え何らかの宣伝手法によって「安い!料金が分かりやすい!明るい!楽しい!癒しになる!」などと宣伝したところで、怪しさ満点です。
したがって、キャバクラで新規顧客を開拓するにあたっては、あらかじめセグメントされた層をターゲットにして行かなければなりません。
狭い範囲へアプローチしていくため、ターゲットの絞り込みが重要となります。
典型的なパターン
では新規顧客開拓にあたって、具体的にはどのような方法がとられているのでしょうか。
もっとも分かりやすいのは、すでにそのお店の固定客となっている顧客が、知人や友人、会社の同僚や部下、取引先の人などをお店に連れてくるというパターンです。
これは客が客を呼ぶという状態であり、お店にとっては最もラクで都合がいいパターンです。
お店は何の宣伝もせず、したがって金銭的にも労力的にもなんら犠牲を払わずに、新規顧客を開拓するチャンスをゲットできるのです。
顧客が新規の顧客を連れてくるというのは、キャバクラだけではなく他の業種でも非常に重視されているマーケティングの一つとなっています。
他の客を連れてくる顧客のことを「ロイヤルカスタマー」と言います。
つまりお店に対して惚れ込んでいるような顧客のことです。
たくさんいる顧客の中でも特に優良な顧客のことであり、「あのお店はおすすめだよ」「今度一緒に行こう」と、お店が頼んでもいないのに宣伝してくれるのです。
特に最近ではSNSが浸透したことで、TwitterやFacebookといった媒体で気軽に書き込み宣伝する機会が増えました。
口コミによる効果は非常に大きなものになっており、逆に言えば悪い口コミも簡単に広まるようになったため、お店側も下手なことはできないご時世になったともいえます(悪い口コミとは、例えば料金が納得いかなかった、キャバ嬢ノルマが引き上げられたためにそのしわ寄せとして同伴をよくせがまれるようになった、スタッフの対応に問題があったなど)。
口コミは大衆操作に近いものがあり、新店舗を開店する時には口コミは特に有効です。
「○○に新店舗が開店する」ということをキャバクラファンに向けて発信すれば、新規開店の情報を浸透させることができ、新規顧客開拓にも有効です。
具体的には、Twitterでお店のアカウントを作り、女の子やお店の情報などを発信しながらフォロワー(そのアカウントを支持する人)を集めていきます。
フォロワーのほとんどはキャバクラファンであるため、新規開店やイベントの情報を告知することで大きな効果が得られるのです。
移籍してきたキャバ嬢が連れてくる
次に考えられるのは、移籍してきたキャバ嬢が、前のお店の指名客を連れてくる場合です。
これもお店側はなんら労なくして顧客を得られるので、良い方法です。
これを推奨するために、移籍したキャバ嬢が顧客に出す移籍案内のハガキも既製品として存在するほどです。
そのハガキでは、
○○でお世話になった□□です。
この度、△△に移籍することになりました。
素晴らしいお店であり、ぜひ☆☆さんにも一度お越しいただきたいと思っています。
よろしくお願いします。
といった内容のものです。
すでに印刷されているため、ハガキに自分の名前と客の名前だけを書きこみ、宛名を書いて投函します。
客からすると味気ないですが、その客はキャバクラ店そのものに通っていたのではなく、そのキャバ嬢に会うために通っていたのですから、移籍すれば移籍後のお店に通うようになります。
これはキャバクラ以外でもあることでしょう。
お店そのものではなく、従業員の接客態度に気分を良くしてそのお店の固定客になった場合、その従業員が他店舗に移動すると客間で移動するという現象はしばしば見られるものなのです。
このような現象が起こるためには従業員の能力に負うところが大きく、客から惚れ込まれているキャバ嬢ならば客を連れて移籍することができることでしょう。
その他の方法
新規顧客開拓の方法はほかにもあります。
主なものは、
- 看板を見てふらっと入ってくる客
- 客引きや黒服に誘われて入ってくる客
- キャバクラ情報誌などのお店情報を見て来店する客
- キャバクラ情報誌に掲載されていた特定のキャバ嬢に会うために来店する客
などの客を新規顧客として掴むという手法が考えられます。
初めてお店に足を運ぶ客は、おおむね上記のいずれかのパターンに当てはまります。
新規顧客を顧客に引き上げる!
さて、来店した客が特定のキャバ嬢を目当てに来店しているならば、その後もお目当てのキャバ嬢に会うためにリピートしてくれる可能性も高いのですが、それ以外の経路でお店に来た客をリピーターに引き上げるためには、相応の仕掛けが必要となります。
それができるかどうかによって、お店の成長が左右されるのです。
そのためには、お店の「営業」としてのハードの要素と、キャバ嬢の接客というソフトの要素がうまく相乗効果を発揮しなければなりません。
ほとんどのキャバクラでは、初回の来店客に対して割引料金を設定しています。
例えば、通常は1時間ワンセットでセット料金が1万円、テーブルチャージや指名料や消費税は別途請求という料金設定になっているお店が、新規顧客に対しては40分で全てコミコミで6000円などといった料金設定にしています。
お試し価格で提供することによって、新規顧客がお店に入ることを促すという事です。
これは、キャバクラに限ったことではないでしょう。
ダイエット用品、健康食品、掃除用具などといった様々な商品において、新商品発売時にお試し価格で提供しているというのはよくあることです。
いくら品質に自信があったとしても、まずは消費者に手に取ってもらって品質を実感してもらわないことには、売上げを伸ばしていくことはできません。
実際に使ってもらい、他の商品との品質の違いや優れている点に納得すれば、客は定期購入などに踏み切ることになります。
キャバクラもこれと同じく、まずはお試し価格で遊んでもらい、そのお店の女の子との会話を楽しんでもらうのです。
ここでのポイントは、他の商品には「無料サンプル」が見られますが、キャバクラの場合はあくまでもお試し価格であって、無料での提供は行っていないという事です。
無料サービスまでしてしまえば、無料サービスだけを狙うバーゲンハンターの餌食になり、無料で楽しんだ挙句に顧客にもならないという最悪のパターンとなってしまいます。
それを避けるために、まずは通常より大幅に安い価格で遊んでもらい、しかし安いからと言って手抜きはせずに満足してもらい、顧客に引き上げるように努力しているのです。
もっとも、冷静に考えてみればいくらお試し価格とはいえども、40分6000円というのは高いと言わざるを得ないでしょう。
しかし、キャバクラは非日常的な空間であり、キャバクラで遊ぶにあたっては1万円以上かかるのが普通と考えられているため、6000円での提供となれば「安い!」と錯覚してしまう人がほとんどです。
これは、行動経済学でも明らかにされているところです。
つまり「アンカリング」という効果であり、元々高いものであるという先入観を持たせた上でそれよりも低い価格を提示すると、客は「安い!」と感じてしまうというものです。
ちなみに、ほとんどのキャバクラで提供されるお試し価格は1万円を越えないという特徴があります。
これは、少々あくどい商品が売られるときにも同じ手法が用いられる、いわば「1万円の法則」とでも言うべきものです。
つまり、人は何らかの商品やサービスを購入した際に満足のいく結果が得られず「騙された!」と思ったとしても、1万円以下ならば泣き寝入りすることが多いのです。
キャバクラ店の中にも、例外的にぼったくり店がないわけではありませんが、ほとんどのお店は真っ当な営業をしており、客を騙すようなことはありません。
お試し価格で入ってみたもののお店の雰囲気やキャバ嬢があまりにも気に入らないという事もあるでしょうが、ぼったくりでない限り1万円以上を請求されることはあり得ないため、客は「まあ仕方ないか」とあきらめることになるのです。
新規顧客開拓にあたってのお試し価格の裏にはこんなテクニックがあったのです。
新規顧客にどのキャバ嬢をつけるか
さて、様々な方法によって新規顧客が店内に入ってきたならば、店内での様々なテクニックによって顧客への引き上げを図ります。
この点が、キャバクラとクラブの大きな相違点でもあるでしょう。
新規顧客のほとんどはフリー客です。そのため、キャバ嬢の接客如何によって、次回も来店するかどうかが決まります。
しかし、そのフリー客がどのようなタイプの女の子を好むか、どのような接客をされたいと考えているのか、お店に何を求めて来店したか、初回の時点ではお店も知ることができません。
車のディーラーなどであれば、新規客が来店した際には「車を買おうと思っている」という目的があることは明白です。
冷やかしの客や来店した客全員にふるまう粗品を目当てに来店する客もいますが、そのような客も全く車に興味がないことはあり得ず、将来の顧客になる可能性があります。
これに対し、キャバクラではフリー客に対して不明点が多すぎます。
そのため、フリー客とキャバ嬢はお見合いのような感覚で接客が行われます。
客の求めていることを黒服が聞いてからキャバ嬢を配置するようなことはなく、黒服はフリー客の腹をさぐりながら好みのキャバ嬢が見つかるまで何人ものキャバ嬢をぶつけていきます。
そのフリー客がお試し価格で入店していた場合には、通常よりも短い時間でお気に入りのキャバ嬢をヒットさせなければなりません。
これに対し、クラブは新規客であってもホステスとのお見合いはありません。
クラブは永久指名が基本であり、一度指名したならばそのホステスが移籍や退店するまではそのお店で別のホステスを指名することはできないのです。
また、指名とは言ってもキャバクラのように客みずから指名するのではなく、クラブではママが客の求めるものを推測して、指名するホステスを勝手に決めてしまいます。
客は自分でお気に入りの女の子を選ぶ権利もないのです。
もしつけられたホステスが好みとはかけ離れた女性で、盛り上がる話が一切できなかった場合には、まったく楽しくなく、癒しにならない時間に高いお金を支払うことになってしまいます。
このことから、指名するキャバ嬢を自分で選ぶことができるキャバクラはかなり良心的である(もしくはクラブがあまりに良心的でない)と言うことができます。
したがって、フリー客への価格設定を引き下げると同時に時間も短く設定しており、フリー客は延長する可能性がほぼないため、制限時間内でいろいろなタイプのキャバ嬢を付けていき、指名したいと思わせるかが勝負の分かれ目となります。
ここまでがお店に要求される部分です。
ちなみに、その仕事を担当しているのは「ラッキー」と呼ばれる黒服です。
付け回し担当の黒服であり、フリーの新規客だけではなく指名客の対する付け回しも行い、お店全体のキャバ嬢の動きを一人で管理する重要な役目です。
企業でいえば営業部長が人事も兼任しているようなものです。
仮にお試し価格の制限時間が40分であったならば、一人のキャバ嬢に5分の接待をさせるとしても8人しかつけることはできません。
実際には、5分という短時間になると客は誰が誰だかわからないうちに40分が過ぎてしまうため、5分よりも長いことも多いです。
8人の中からお気に入りの子を見つけ出せない可能性ももちろんあります。
このむずかしいことを成し遂げるために、ラッキーは色々な女の子を付けていきます。
指名本数が上位にくるようなキャバ嬢を付けてみて、ダメだった場合にはアルバイトのキャバ嬢から色々なキャバ嬢、例えば色白ロングヘアのキャバ嬢、日焼けしたショートヘアでスポーティなキャバ嬢、ギャル系のキャバ嬢などあらゆるキャバ嬢を付けていき、客の反応を影で伺いながら客のニーズをくみ取っていくのです。
タイプじゃない子を指名する客がいるワケ
キャバ嬢を付けた時点で、客はお店の管理から離れ、キャバ嬢の接客にすべてがゆだねられることになります。
車のセールスでいえば、お店対客ではなくセールスマン対客となり、セールスマンはできるだけ高い価格で売ろうとし、客はできるだけ良い条件で買おうとするため、互いに腹の中を探り合って値引き交渉などが行われます。
セールスマンとしては客をたてつつも、結局のところは会社が「ここまで」と定めた値引き価格の範囲内で、より高い価格で買ってもらうように仕向けていきます。
つまり、セールスマンは揉み手しながら客を立て、場合によっては値引きにも応じていますが、実際にはしっかりと商売をしているというわけです。
これはキャバ嬢も同じことで、接客における様々なテクニックによって、客を引き付けていくのが仕事です。
不思議なのは、フリー客として入った客が、自分の好みのキャバ嬢がついていたにもかかわらず、次回からは違うキャバ嬢を指名する人がいることです。
これは人間の心理の不思議なところです。
制限時間内にラッキーの采配によって複数のキャバ嬢が接客するわけですが、これはいわば競馬のように、横一線にならんだ状態から合図で一斉に走り出すようなものです。
客の好みのタイプのキャバ嬢というのは、一歩リードした状態で走っている状態です。
しかし、ふと気づくと(次回の来店の際に)全くのノーマークだったキャバ嬢が一着(指名を獲得)となっているようなものです。
キャバクラ好きの人に聞いてみるとわかりますが、このようなことはしばしば起こるものです。
つまり、日焼けしたサバサバ系の女の子が好きであるはずが、それまでに指名してきた女の子を振り返ってみると全く異なるタイプの女の子を指名していたという事は少なくありません。
そのように、自分の好みのタイプとは異なる女の子を指名することがあるのですが、これはその女の子から魔法をかけられているからなのです。
キャバ嬢にとって、これは基本中の基本なのかもしれません。
つまり、フリー客に最初に接客する時点では、そのキャバ嬢の性格面や会話の内容などを知らないため、とりあえず外見的にタイプのキャバ嬢が有利なのは間違いないのですが、タイプではないキャバ嬢も、その客についた時にどのような話をし、どのような接し方をするかによって、指名客をゲットできる可能性が大いにあるのです。
キャバ嬢がそれを意識して行っているか、無意識的にできているのかに関わらず、このような能力をもったキャバ嬢が売上を伸ばすことができるのです。
人を惹きつける接客術
キャバクラでの接客は以下のような流れで行われます。
- お店に入ると、黒服から「いらっしゃいませ!」と言われる。
待機中のキャバ嬢たちも全員立って出迎える。 - 黒服が席まで丁寧に案内する。
- ウェイターが氷を運んでくる。
- 黒服がキャバ嬢を連れてきて「ご紹介します。○○さんです」と言う。
ここからキャバ嬢の接客がスタートする。 - キャバ嬢は「初めまして、○○です」といって名刺を渡す。
- 「お飲み物は何にしますか?」とキャバ嬢が客の好みを聞き、言われたものを作る。
大抵はハウスボトルのウイスキーやブランデーの水割りになる。
グラスに片手を添えてマドラーでかき混ぜて作り、膝の上に乗せたハンカチでグラスの水滴を拭いてから客に提供する。 - キャバ嬢の専用のグラスには氷を入れてミネラルウォーターやお茶をついで乾杯をする。
そして、ここから会話などの本格的な接客が始まり、キャバ嬢の腕の見せ所となります。
お酒の入った客はただ楽しく話しているだけでは、キャバ嬢にとっては心理戦です。
ファーストインプレッション
では、上記の流れを詳しく分析してみましょう。
まず、黒服がキャバ嬢を紹介する時ですが、これは意外にも重要なものです。
これは、飛び込み営業に例えるならば、営業マンが家に来て挨拶をするときであり、また新規の取引先に行ったときに相手方に挨拶する時のようなものです。
そのような場合、どのような部分を見られているのかと言えば、
- 全身から醸している雰囲気
- 髪型
- 服装
- 顔色や顔つき
- 何歳くらいか
などの外見上の特徴です。
客はキャバ嬢を見たときに、
- かわいらしいアニメ声でおとなしそうな女の子だな
- 色白で細身だな。スリーサイズはどれくらいだろう?
- 長い髪がいいね
- 赤いドレスがセクシーだな
- 20歳くらいに見えるけど、実際は何歳なんだろう?
など、客が意識しているかどうかに関わらず色々な部分を推測しています。
これに対してキャバ嬢は、意識的に客を品定めしています。
つまり、
- この人、会社ではうだつが上がらないタイプだな
- 髪の毛が薄くなり始めてるな。ちょっと小太りだし、「ハゲブタ」で覚えよう
- スーツもネクタイも安物。あんまりお金を持ってないんだな
- 靴が汚れてる。営業職かな?
- 年齢は30くらいで独身だから、係長クラスかな?
などといった品定めを行っています。
キャバ嬢にとって特に大切なのは、客の財布の中身を的確に推測することです。
それができれば、指名されたときにどの程度営業をかけるべきなのかを把握することができます。
このほか、相手の外見的特徴から属性や性格などを推測し、どのような会話をしようかと無意識的に考えているものです。
スキンシップというテクニック
お店によっては、黒服がキャバ嬢を紹介して着席させるにあたって、キャバ嬢が客に手を差し出して握手するように指導しているお店もあります。
たかが握手と思うかも知れませんが、これはかなり効果的な手段です。
このほか、あるキャバクラでは客の膝の上にキャバ嬢が片足を載せて接客するというお店もあり、このようなものは握手よりもかなり効果的となります。
なぜならば、異性間においてはスキンシップというコミュニケーションツールが非常に有効だからです。
誰もが経験したことがあると思いますが、付き合ってまもない男女はまだそれほど関係が深くないため、手を握るだけでもドキドキするものです。
もっとも、性的なことに関して早熟な今の若い世代にとってはそうでない場合も多いと思いますが、少なくともある程度年が上の世代の客にとっては手を握ることに深い意味を見出していることが多いのです。
手を握ることによって、キャバ嬢の手の柔らかさやぬくもり、握り返してくれる力の強さなどを感じることによって、言葉だけの接客では感じられない感触を得ることができるのです。
これによって、二人の親密度は高くなります。
もちろん、紹介されたときにキャバ嬢と握手をすることの意外性を狙っているという事もあるでしょう。
しかし、それ以上に握手をすることによって親近感が芽生えることの方が重要です。
このことは、AKB48が会えるアイドルとして大規模な握手会などを開いて絶大な支持を得たことにも似ています。
このほか、比較的よく用いられるテクニックとしては、キャバ嬢が紹介されたときの身振りがあります。
すなわち、普通ならば頭を下げるところを、そうせずに膝を少しまげて体を少し沈めるというスタイルです。
上記のような膝を少し曲げるといったボディランゲージが意味するものは、「謙譲の姿勢」です。
自分の方が低い立場にある事、相手を持ち上げる意思がある事をアピールするものなのです。
顧客満足度を高めるためには、サービス業の場合には殿様商売をしていてはいけません。
殿様商売の代表例が役所の窓口対応ですが、あのように上から目線で「応対してあげている」という態度が少しでも見られれば、そのキャバ嬢が売れることはまずないと言っていいでしょう。
上から目線ではなく、膝を曲げて上体を落とし、客の目線よりも下から見上げることによって、客は意図せずに上から目線になり優越感を覚えることとなります。
もっとも、上から目線のようなキャバ嬢は、入店して間もなくお店側の指導によって鼻っ柱を折られることでしょう。
そのようなキャバ嬢がいること自体がお店にマイナスになるからです。
考えてみれば分かりますが、例えばコンビニを比較するとして、A店は店員の態度が非常によく品揃えはまあまあ、B店は店員の態度が悪く品ぞろえは良いとなると、どちらを選ぶでしょうか。
店員の態度など気にせず欲しいものが買えるならそれでいいと考える人は少数派で、店員の接客でいい気分に浸れるお店を選ぶはずです。
キャバクラ店も同じであり、いくらよいキャバ嬢を集めていてもキャバ嬢が「謙譲の態度」をとれない様ではお店は繁盛しません。
だからこそ、客に優越感を与える接客が求められるのです。