キャバクラという産業は夜の世界であり、情報も少なく、近づかない人からすれば謎の多い世界です。
そこで、キャバクラを知るためには、キャバクラという業態がどのように成り立っているかに触れる必要があるでしょう。
キャバクラを支える5つの要素
キャバクラという「夜のお店」は複雑怪奇なイメージを持っているものですが、実際にキャバクラを構成する要素は五つに過ぎません。
それは、オーナー、箱、黒服、キャバ嬢、客の五つです。
確かに、一般的なイメージの通り夜の業界は一筋縄ではいかないものですが、この五つの要素によってうまく成り立たせているのです。
キャバクラ店のことを「箱」というのは上述の通りですが、この箱を作るのはオーナーの仕事です。
オーナーの仕事は出店から始まり、立地を決め、内装をし、お店のコンセプトや店名を考えることも全てオーナーの仕事です。
しかし、実際に営業を始めるとオーナーが表に出てくることはなく、あくまでも影で活躍しています。
といっても、お店のオペレーションを全体的に統括しているのはオーナーであり、いわば元締めとしての重要な役割をはたしています。
オーナーは影に隠れてしまいますから、実際に見える形で動いている要素は男性スタッフである黒服、キャバ嬢、客となります。
男性スタッフは店内のテーブルの状況に気を使って把握しており、キャバ嬢が働きやすくなるためのさまざまな雑用をこなしています。
キャバ嬢の配置を決めるスタッフは「ラッキー(付け回し)」灰皿交換や氷の補充を行うスタッフは「ウェイター」、客の滞在時間を計算して会計業務にあたるスタッフを「リスト」と言います。
また、お店によっては男性スタッフではなく、ウェイターとしてバニーガールが配置されていたり、リストとしてそのお店で元キャバ嬢をしていた女性スタッフが配置されていることもあります。
このように、キャストを立てる支える存在はキャバクラに欠かせません。
つまり、表面的に見ればキャバ嬢が前面に出て働いており、それがお店の売上の根幹とも思われますが、実際にはすべての要素が調和している必要があります。
箱がいくら立派であっても、黒服やキャストが駄目であればお店は繁盛しません。
このことは有名店が出店する場合には特に気を使っていることであり、そのお店にふさわしいキャストや黒服をいかに集めるかというのはオーナーをはじめとした幹部サイドの大きな仕事となっています。
全ての要素がうまく調和して構図が良くできているという事は、上意下達の仕組みが巧妙になっているという事でもあります。
キャバ嬢は客を繋ぎとめる役割を果たしているとすれば、そのキャバ嬢を動かしているのが黒服などのスタッフであるという事です。
正確に言うと、黒服の中でもマネージャーという立場のスタッフがキャバ嬢を管理しています。
このマネージャーをさらに束ねているのが店長であり、これが黒服のトップに当たります。
店長の役割は会社でいうと社長に近いものであり、キャバクラはグループ内のそれぞれの店舗を分社化して、店長を社長として扱っているキャバクラチェーンも多いものです。
つまり、オーナー会社を核として各店舗が衛星のように営業されており、店舗ごとに独立した収支計算をしているのです。
これは、一般的な企業社会でも見られるカンパニー制(事業部ごとに独立採算制を取る体制)そのものと言えます。
キャバクラは一般的な企業というにおいがありませんが、実際には一般の企業と同じような形で営業されており、むしろ一般企業がカンパニー制を採用する前からカンパニー制で営業されていました。
キャバクラが現在一般的となった企業体制の先駆けであるということは驚きに値します。
完全実力主義のキャバクラ業界
店舗ごとに独立採算制を取っているという事は、採算の取れなった店舗に対して他の店舗が援助するなどといった体制は望めません。
採算が取れなかった店舗は経営の改善が求められ、店長には重圧がかかります。
改善策を出しても改善しなければ店長は格下げとなり、普通のウェイターに降格することもあります。
それならまだマシな方で、店舗そのものをたたまなければならない場合もあります。
キャバクラは厳しい世界なのです。
このことを逆から捉えるならば、キャバクラの世界では成果がかなり重要視されるものであり、成果さえ挙げれば一気に幹部に駆け上がるのも夢ではないという事です。
実力がすべての世界であり、結果がすべての世界なのです。
スタッフにおけるこのような実力主義は、スタッフだけではなくキャバクラ業界全体に浸透しています。
お店の売上だけが店長の評価基準となるのと同じように、マネージャーをしている黒服ならば担当するキャバ嬢の成績が評価基準となり、キャバ嬢一個人を見てみても指名本数をはじめとした売上げ貢献度だけが評価基準となります。
つまり、スタッフにしろキャバ嬢にしろ、「成績」という厳しい評価基準でふるいにかけられ、精鋭だけが生き残ってお店は強くなり、そのような精鋭だけがお給料を安定的にもらうことができる仕組みです。
企業のオペレーション的には非常に洗練されたものであり、これ以上のものはほかにないでしょう。
そのため、スタッフおキャバ嬢も成果を上げるために必死であり、客と接するにあたってもそれが第一になるのですが、そこを客に悟られないように高い顧客満足度を与えるという難しい仕事なのです。