アベノミクスだ、日経平均株価が2万円を越えた、長年のデフレからわずかにインフレになった・・・などと景気が改善したと言われますが、社会の隅々までその恩恵に浴したかというと疑問が残ります。
モノが売れないという声もよく聞かれます。
しかし、それでも売れているところは売れています。
筆者の近所のラーメン屋は連日大行列ができていますし、土日のショッピングモールでは家族連れの客でいっぱいです。
最近は外国人観光客が増加しており、爆買いの影響で白物家電が飛ぶように売れたり、ホテル業界も大盛況です。
マス・カスタマイゼーションとは
やはり、不景気とはいっても人々の関心を集めるものにはお金が流れているのです。
つまり、モノが売れないのではなく、消費者の関心を集める対象が少ないから買い控えが起きているというだけです。
財布のひもが緩むきっかけさえあれば、モノは売れていきます。
そのためには、客が関心を寄せるように商品をカスタマイズして売ることが求められます。
その最たる成功例はユニクロでしょう。
ユニクロは従来の衣服を人々の生活の質を向上させるものへと進化させた結果、たくさん売って大企業になりました。
普通のお店で売られているものならば「安かろう悪かろう」ですが、ユニクロで売られている同じ価格の物はCMで人気タレントが着ているし、安くても品質が良いという信頼があり、お店に行けば種類や色も豊富で必ず自分好みの物が見つかるのです。
これこそユニクロの成功の秘訣でしょう(もっとも、昨今のユニクロは決して安いものばかりではなくなりましたが)。
このようなマーケティング手法を「マス・カスタマイゼーション」と言います。
これは、キャバクラで働くキャバ嬢にも同じことが言えます。
キャバ嬢も自分自身に対してマス・カスタマイゼーションを図ることによって、自分が指名客により好まれ、またフリー客が指名客になる可能性を高めていくことができるのです。
これこそが売れっ子キャバ嬢への道です。
もちろん、キャバ嬢の中にマス・カスタマイゼーションと聞いてピンとくるような人はほとんどいないでしょうが、だからこそ本稿ではそれを理解し、他のキャバ嬢に差をつけてもらえればと思います。
マス・カスタマイゼーションの具体例
では、キャバ嬢がマス・カスタマイゼーションを図る場合、どのような視点を持つべきなのでしょうか。
まず、モノが売れないという状況をキャバクラに当てはめるならば、指名本数が取れないことを意味し、その原因は2つあります。
客が喜んでいない
→自分の接客技術が不足していることを意味しています。
受け身になるのではなく、どうすればよいかを自分自身で考えながら仕掛けをしていくことが大切です。
自分が成長していない
→自分が変化していかなければ、指名客を喜ばせることはできません。
初めて指名した日から、何度指名しても同じ接客ばかりでは指名客は飽きてしまうのです。
客の目は肥えていくのですから、それと共に自分も成長していくことが大切です。
それによって、客とキャバ嬢がともに成長するコラボレーションにもつながります。
キャバクラの営業で得られた評価を客観的に評価するためには、以下の四つのポイントを見ます。
売上昨対比
前年、前期、先月、先週、前日などの売上と今年、今期、今月、今週、今日などの売上を比較し、増減を知る指数です。
キャバ嬢は分かりやすく、指名本数で比較すればよいだけです。
また、指名は3ポイント、延長は1ポイント、同伴は2ポイントなどとポイント制になっているならば、ポイントを比較しても良いでしょう。
売上目標達成率
指名本数やポイントに目標値を設定し、それに対してどれくらい達成したかを見ます。
ポイント制のお店では、どのくらいのポイントで昇給かが明確に決められているため、それを目標として設定し、目標達成率を割り出してみます。
接客した客数
営業職でいえば訪問件数のようなものです。
指名客だけではなく、フリー客も含めた接客数を見てみます。
指名本数
フリー客は含まず指名客だけを計算します。
フリー客への接客数はスタッフのつけ回しの影響も大きいため、この数字を見ることで純粋にどれくらい効率よく指名客の接客ができたかが分かります。
効率を上げるためには、抜かりない営業によってできるだけ多く接客できるよう営業していくことが求められます。
以上の四つのポイントにおいて実績を上げるための戦略や戦術が三つあります。
売れっ子キャバ嬢たちは意識するしないにかかわらず、その戦略や先述に従って営業や接客をしているものです。
それは、
- どのような客層に
- どのようなサービスを
- どのような方法で
実績を伸ばしていくかを考えるという事です。
つまり、営業をかける客は誰なのか、誰と同伴してポイントを取っていくのか、そのためにどのようなサービスをどのような方法で提供していくかを自分で考えていくことです。
自分で考えることが重要であり、自分で考えてこそ成長していきます。
以上のことの根底には、「客のためにしてあげることによって、自分にもよいことがある」という一貫した思想があります。
指名本数を上げ、同伴や延長もしてもらって売れっ子キャバ嬢になっていくためには、客に尽くすことが必要なのです。
そのように考えれば、もっと営業や接客の方法を考えていく気にもなるというものです。
中には、たくさん儲けるために客から短い期間で徹底的に搾り取ろうとするキャバ嬢もいます。
しかし、そうやって短期間に100万円を搾り取ったとしても、その後は続きませんし、悪い噂もたつかもしれません。
そうではなく、毎月5万円使ってくれる指名客を複数抱えた方が実績を上げることができます。
長続きさせるのも商売のコツなのです。
マス・カスタマイゼーションのために自分を変えていきたいと思ったとき、すべきことは「視野を広げること」です。
視野は色々な方法によって広げることができます。
例えば、付き合う人を広げることや接する環境を広げることです。
いつも同じ人と付き合っているだけでは視野は広がりません。
大体において、類は友を呼ぶで似たもの同士が集まって愚痴が繰り広げられるだけです。
そのため、より多くの異業種の友達を作るのです。
そうすれば環境もおのずと広がっていくでしょう。
最近はSNSの発達によって、このような異業種間交流は簡単になっています。
次に、知識の習得によっても視野を広げることができます。
これは学術的な意味での知識ではなく、ネタ集めと考えると良いでしょう。
キャバクラは遊ぶ場所ではありますが、政治や経済の話が出ることもあります。
そうではなくとも、自分が知らないことに対する話題にはついていくことができません。
そのため、話のテーマの裾野を広げる意味で、話のタネを日ごろから収集しておくのです。
方法は色々あり、新聞や週刊誌などを読まなくとも、最近はスマホアプリで話のネタを提供してくれるものもあります。
また、接客の際には客の話からなんでも吸収してやろうという態度で接客をしておくと、効率よく話のタネを集めることができます。
全く興味がない、知らないテーマの話でも、分からない点を質問することによって興味が持てる点が見つかる場合が多いです。
このことから分かる通り、マス・カスタマイゼーションは案外シンプルなものなのです。
実際、マス・カスタマイゼーションという考え方そのものがシンプルな事実から発生したマーケティングの考え方でもあります。
それは、「客はそれぞれ必ず違う」という事です。
当たり前のことですが、長い間ビジネスの世界ではこの観点が見捨てられてきました。
そして試行錯誤の末、ようやくマス・カスタマイゼーションに光りが当たっているのです。
マス・カスタマイゼーションの考え方をキャバクラに適用するならば、「一人ひとりの客の生活を思い浮かべて接する」と言えるでしょう。
例えば、正午ごろは指名客のAさんはお昼休みかなと考える。
午後1時ごろは指名客のBさんは昼休みが終わって気合を入れなおしているころかなと考える。
午後4時ごろは指名客のCさんは営業が終わって帰社の途中かなと考える。
こんな具合に思いを巡らせることです。
一人ひとり異なることを思い浮かべる癖を付けていれば、いつの間にか無意識のうちにそれができるようになり、指名客ごとに最も適した接客が可能となります。
また、指名客事の顧客管理にも役立ち、営業もうまくいくようになるのです。
マス・カスタマイゼーションを実践しよう
ではここからは、売れっ子キャバ嬢たちが実際にどのような行動によってマス・カスタマイゼーションを実践しているのかを見て行きましょう。
意外に地味な努力をしていることが分かります。
メモをとる
売れっ子キャバ嬢たちは記憶力がずば抜けて優れているわけではありません。
しかし、指名客ごとによく整理された情報を持っており、営業や接客に役立てています。
これは、彼女たちがきちんとメモしているからです。
どのような話をしたか、宿題はあったかなどは次回の接客の際に即座に思い出して役立てる必要がありますが、たくさんの客と接するのですから、メモせずにそれができるわけはありません。
メモをすることによっていつでも情報を引き出せるようにしておきます。
指名客のAさんに営業をかけてAさんが来店すると分かっていたならば、メモを見返して前回の話の続きができるようにしておきます。
また、メモしておけば記憶に残りやすいですから、例えば半年前に来店した客が来た場合にも完全に忘れていることが少なくなります。
もちろん、メモは客の目の前ではなく見えないところでします。
トイレに立った時などにササッとメモして置き、仕事が終わってからまとめましょう。
客からもらった名刺の裏にメモするとなおよいでしょう。
よく気づく
「よく気づく」ということは大切です。
なぜならば、前回の来店と今回の来店で変化があった場合に変化に気づくことができるからです。
髪型が変わった、時計が変わった、スーツが変わったなど色々な変化が考えられますが、これに気づけば客は「この子はよく見てくれている」と思って喜びます。
しかし、こればかりはキャバ嬢の感性の問題でしょう。
細かいことに気づくのが非常に苦手なキャバ嬢がおり、これは映像記憶が優れていないという事でもありますから、どうしようもないことです。
といっても、変化に気づく訓練をしておけばいくらかは改善されます。
そのためには街の様子の変化を観察したり、友達の変化を観察したり、植物を育てて変化を観察したり、方法は色々あります。
自分に合った方法で変化に気づく力を養ってください。
財布の中身を推測する
指名客には色々な人がおり、それぞれ仕事も違えば収入も違います。
そのため、来店できる曜日や時間、また予算なども異なります。
したがって、すべての指名客に同じ営業をするのではなく、その客のスケジュールや財布の中身を推測して営業することが重要です。
例えば、予算がたくさんある人には同伴のお願いや延長のおねだりをしても良いでしょうが、予算が少ないと思われる人には来店頻度や滞在時間が無理にならない程度にサポートしてあげることができます。
ポイントはお会計の時です。
客はお会計の時に財布を取り出します。
その時、カードで支払う客もいるでしょう。
その際にはカードの種類をこっそりチェックしましょう。
収入に応じてカードが違うため、カードによってお財布事情を推測することができます。
売れっ子キャバ嬢の中には、懐具合を心配するそぶりを見せておいて財布の中身をチェックする子もいます。
もちろん、会話の中からどのような業種なのか、どのくらいの地位にいるのか、景気が良いか悪いかなどを知ることもできます。
この情報によって、指名客ごとにアプローチを変え、効率よく営業できるのです。
色々な客と知り合う
キャバ嬢にとって指名客は最も大切な存在であり、それを繋ぎとめることに必死かもしれません。
それで精一杯のキャバ嬢の中には、自分以外の指名が入っている客にヘルプでついたときに熱心ではなくなるキャバ嬢も多いものです。
これは、「この人は別の子の指名客だから、どうせ自分の指名にはならない」と思っているからです。
しかし、指名本数をもっと増やしていくためには指名客以外の客と知り合う事も大切であり、売れっ子キャバ嬢たちはしっかりと接客しています。
これは、指名替え(別のキャバ嬢の指名客になること)を狙っているわけではありません。
ではどのような意味があるのでしょうか。
自分の指名客ではない客に丁寧に接することで効果を発揮するのは、その客がフリー客を連れてきたときです。
その客が自分の同僚や後輩などを連れて来店した際、その同僚や後輩が初来店ならばフリー客となります。
そして、以前丁寧に接客して「感じのいいキャバ嬢」と思われていたならば、フリー客の指名を得られる可能性があるのです。
このほか、指名客であるかどうかによって態度がガラリと変わるのは時に致命傷となります。
それは、昼間は取引関係にある知り合い同士が同じお店を利用していることがあるからです。
そのようなときに片方で態度が大きく変わってしまうと、指名客にまで悪い印象を与えかねないのです。
これを避けるために、売れっ子キャバ嬢たちは客同士の人間関係を把握し、うまく立ち回っています。
営業の際の工夫
まだ携帯電話が普及していなかったころ、指名客の会社に電話をして営業を行っていました。
しかし、携帯電話が普及すると携帯への電話になり、今ではメールでの営業が一般的になっています。
メールの強みは、必要なときに読めるという事です。
仕事が忙しい時に電話がかかってくればイライラさせる恐れがありますが、メールならば一息ついたころに見ることができます。
また、こっそり営業を受けることができるため、会社のOLなどに知られることもあります。
また、指名客からキャバ嬢への連絡も手軽にできるようになりました。
しかし、メールの使うコツを知らないキャバ嬢が多いのが事実です。
来店してほしいときや同伴してほしいときにメールで営業するキャバ嬢は多いのですが、フォローのメールをこまめに入れるキャバ嬢はそれほど多くないのです。
実は、来店促進のメールよりも来店後のフォローのメールの方が重要です。
客が帰宅した頃を見計らって「無事に帰宅されましたか?とても楽しかったです」とメールをしたり、翌日に「昨日はごちそうさまでした。とても楽しかったです」とメールすることが大切なのです。
もっとも、本気度の高いキャバ嬢になると、お礼の手紙を直筆で書いていることが多く、NO.1キャバ嬢によく見られます。
自分の字で丁寧に気持ちを込めて、押しつけがましくならないように書きます。
このような行為は指名客に非常に響くものであり、指名客の心をぐっとつかみます。
事前に考える
売れるキャバ嬢は、事前に色々考えてお店に出てきます。
何も考えずにのこのこ出勤するのではなく、今日はこんな話をしてみよう、今日はこういうことに気を付けようと作戦を練っておくのです。
特に、特定の指名客が来店することが分かっているならば、前回の接客の際のメモを読み返し、作戦を練ります。
そうすると、客は「この子は俺のことを分かってくれているんだな」と思います。
客の自尊心をくすぐる
男は多かれ少なかれ自尊心を持っています。
しかし、普通に仕事をしていると、バリバリできる超一流サラリーマンでもない限り、なかなか褒められることはなく、自尊心をくすぐられることは少ないものです。
そこで、自尊心をくすぐってあげれば、客は気分を良くします。
なにも難しい事ではありません。
ありがとう、すごいね、よかったね、頑張ってねなどと声を掛けるだけでいいのです。
そのような言葉でも、普段なかなか声を掛けられない彼らの胸には確実に響きます。
小さなことを積み重ねる
指名客との繋がりを深めるためには、客と何かを約束してそれを実行することが効果的です。
ごくごく小さな約束で構いません。
例えば、会話の中で出た話題に関して「今度調べておくね」と言っていたならば、「先日のあの話だけど、こういうことだったよ」とメールを送るようなことです。
そのような小さなことを積み重ねていくと心理的には大きな効果をもたらします。
なぜならば、客は「この子は俺のことを気遣ってくれている」と思わせることができるからです。
意外な一面を見せる
客はキャバ嬢を指名するたびにいつも同じ姿を見せられると、飽きてしまいます(もちろん、変わらぬ姿にホッとする客もいますが)。
また、なれ合いが生じる恐れがあります。
せっかく来店したのに話すこともなくなってしまえば、別のキャバ嬢に気持ちが向いてしまうかもしれません。
それを防ぐためには、意外感を演出することです。
髪型を変えてみたり、化粧を変えてみたり、コスチュームを変えてみたり、色々な方法があります。
こうして新鮮さを味わわせることによって、マンネリ化を防ぐことができます。
以上がマス・カスタマイゼーションの実践方法です。
読んでみるとどれも簡単に実践できるものであることが分かります。
NO.1キャバ嬢や売れっ子キャバ嬢たちは何も難しいことをしているわけではないのです。
ただし、毎回の接客で着実に実践し続けることが難しいのです。
当たり前のことが当たり前にできるキャバ嬢になることができれば、売れっ子になることができるでしょう。