会話に困ってしまうお客さんによくあるのは、年が離れているということです。
ちょっと離れているだけなら問題にならないことも多いのですが、大きく離れているとどんな話をすれば良いのかわからず、会話に困ってしまうのです。
しかし、どれほど年上でも、むしろ年上であればあるほど会話が盛り上がる方法というものもあります。
年の離れたお客さん
次に紹介するパターンは、お客さんと年が離れていることによって合わないケースです。
キャバクラには様々なお客さんが来るものですが、20代のお客さんよりも、30代以上のお客さんが圧倒的に多くなっています。
キャバクラの主要な客層は、30代半ばから60代なのです。
それに対して、キャバ嬢は若ければ10代(18、19歳)、多くは20代、お姉さんキャバ嬢といっても30代前半です。
このことから、お客さんの多くはキャバ嬢よりも年齢が上、それも場合によってはかなり上ということになります。
年齢が離れていても、接客していくうちにお客さんのことがよくわかるようになれば、会話を盛り上げるのは容易です。
しかし、お客さんがどのような人であるかがよくわからないうちは、何を話していいかわからず、話のきっかけさえ掴みにくいことでしょう。
これは、ある程度仕方のないことです。
年齢が離れていればいるほど、人生経験も違いますし、生きてきた時代背景も違います。
そのため、共有する思い出などもなく、会話が噛み合わないことが多くなるのです。
年が離れたお客さんを分析する
しかし、年が離れているお客さんに対しても、接客の仕方があります。
そもそも、共有する思い出に頼って接客しているのが少々問題なのです。
共有する思い出などはなくとも、お客さんの職業や趣味などのプロフィールをおさえることによって、話のきっかけをつかんでいくことができるものです。
また、お客さんの若い頃に流行った歌やモノを覚えておけば、話題のきっかけを見つけ出すことができます。
特に、歌というのはいいですね。
そのお客さんが年をとっていればいるほど、歌は効果的になります。
それはなぜだと思いますか?
現在20代のキャバ嬢ならば、小学生や中学生のころには、もうケータイもあればインターネットもあったでしょう。
ケータイがあることで、友達といつでも繋がっていられますから、メールや電話をしょっちゅうやっていたという人は多いと思います。
また、インターネットがあることによって、様々な情報が容易に手に入るようになりましたし、通信販売で欲しいものはいつでも手に入りますし、インターネットを通した娯楽も楽しむことができます。
今の若い人たちは、娯楽に溢れた時代を生きているのです。
しかし、これが40代以上になるとどうでしょうか。
40代以上のお客さんの青少年時代、ケータイやインターネットはありませんでした。
ケータイがなければ、学校が終わって友達と別れて家に帰れば、そこからは一人の時間でした。
インターネットなんてありませんから、ネットサーフィンをしたり、インターネット番組を見たり、動画をみたりして一人の時間を潰すこともできません。
そんな中で何が娯楽になるのかといえば、テレビを見るとか、読書をするとか、ラジオを聞くとか、音楽を聞くということしかありません。
特に、家族が寝静まった夜中、青年なりの思いを色々にめぐらしながら、音楽に聞き入ったという人が多いのです。
音楽は時間を問わずにいつでも楽しめるものですから、当時の人々にとって、今の人からは考えられないほど重要な娯楽だったのです。
ダウンタウンの松本人志のラジオ番組に『放送室』というのがありましたが、この番組は同級生の放送作家と思い出話などをするというラジオです。
昔を懐かしむ思い出話などが笑いとともに語られるのですが、途中で挿入される音楽は最近話題の音楽ではなく、彼らの思い出に残っている歌ばかりです。
それを聞いて、しみじみと「ええなぁ〜」などと言っていました。
このように、40代以上の人の記憶の中には、当時の音楽が根強く残っており、自分が当時ハマった音楽というのは、宝物のように心の中に大切にしまってあるものです。
その音楽を聴けば、当時の気持ちが蘇り、懐かしさに浸り、いい気分になることができます。
歌で攻める!
さて、これで一つの攻め方がわかりました。
それは、年が離れているお客さんと会話の糸口が見えない時には、そのお客さんが青年時代に流行っていたもの、特に歌を話題にしてみると、盛り上がる可能性が高いということです。
このことは、私も実感しているところです。
私は、訳あって色々な年上の方と付き合っていたことがあります。
むしろ、20代の人なんて私くらいのもので、他は40代や50代、場合によっては70代以上の人ばかりという環境です。
宴会などに参加すると、当然ながらついていけない会話も多いもので、末席でただ黙々と飲んでいることになります。
しかし、おじいさんの中には豪傑肌の人もおり、そういう人はお酒が入ると豪快な余興を求めるようになります。
すると、
おい!なんか歌え!一番若い奴から!
となります。
最初はびっくりしました。
大勢の前で突っ立ち、アカペラで歌うことを求められるのです。
緊張もさることながら、人前でアカペラで歌う機会などほとんどないですから、狼狽してしまいます。
しかし、嫌だというわけにも言わず、歌うことに。
まさかここで、
えー、ではミスチルのシーソーゲームを・・・。
なんていえば、怒号やコップ、場合によっては鉄拳が飛んでこないとも限りません。
幸いにも、私はもともと演歌が好きですから、まあ演歌なら間違いなかろうと思って、
三波春夫なんかでよろしいでしょうか・・・。
と言ったところ、
オオ!俵星玄蕃か?
といった反応。
俵星玄蕃といえば三波春夫の代表作で、時間にして8分程度もある歌謡浪曲です。
当然、アカペラでは歌えないだろうと、多少からかいも含んだ言葉だったのでしょう。
しかし私は歌詞も節も全部覚えていましたから、
では俵星玄蕃を。
といい、緊張しつつも歌い上げました。
するとやんややんやの大喝采、皆さん大変喜んでくださって、名前も顔もすぐに覚えてもらい、お酒の席には必ず呼ばれるようになりました。
もちろん、歌わされることになるのですが・・・。
このように、いくら年齢が離れていても、歌で一気に距離を縮めることが可能です。
いやむしろ、年齢が離れていれば離れているほど、相手は自分の時代の歌など当然知らないという先入観を持っているのですから、歌えた時の衝撃には凄まじいものがあります。
ですから、皆さんもちょっと古い歌を勉強して見るとかなり有利になります。
例えば1950年代、60年代、70年代、80年代くらいまで、その当時に流行った曲を何曲かずつ勉強しておくのです。
そんな古臭い、カビの生えたような歌なんて聞いてられないよ、と思う人もいるかもしれません。
しかし、まずは聞いてみてください。
当時流行った歌は当時の一流の歌であり、一流には一流たる理由が絶対ありますから、カビなんて生えていません。
もちろん、現代の歌とは雰囲気から何からかなり違いますから、最初はよさがわからないこともあるでしょう。
しかし、繰り返し聴くうちによさがわかってくるものですし、聴けば聴くほどハマってくるものです。
ハマってしまえば覚えようとしなくても覚えられますし、もっと色々な歌を知りたいと思うようになるでしょう。
もっとも、その時代時代の歌に精通する必要はありません。
マニアックにならなくてもいいのです。
あまりにもマニアックであれば、年相応ではないという印象を与え、せっかく若くても若々さが売りにできなくなることもあります。
ですから、とりあえずは代表作を覚えることを目指してください。
当時流行っていた歌がわかっていれば、以下のような会話の展開もあり得ます。
いくつだかお聞きしてもいいですか?
今年で60だよ。君は?
21になります。
わかいね〜。もう孫みたいなもんだね。
でもお若く見えますよ。
いやいや、そんなことないよ。
この前ようやくスマホに変えたんだけどさ、操作が難しくって。
俺の若い頃はこんなもんなくてさ、便利な時代になったもんだよ。
便利ですよね。
でも、昔もいいじゃないですか。
わたし、昔の歌好きですよ。
尾崎紀世彦の『また逢う日まで』とか!
へえー、知ってるんだ。
あの歌は流行ったねぇ。
あの時代はね・・・
こんな風に会話が展開していき、お客さんは当時のことを色々話してくれることもあります。
このような話をすれば、お客さんを年寄り扱いしているようで失礼ではないかという意見もあるかもしれませんが、それも言い方ひとつです。
むしろ、60代になってもキャバクラに来ているようなお客さんの中には、自分の年の重ね方に自信を持っている人も多いものですから、人生で培った経験や知識を教えることを快感に思う人も多いのです。
ですから、年齢が上の人と話すときは、聞き上手になることがとても大切です。
もちろん、全てのお客さんに対して聞き上手な態度は大切なものですが、年齢が離れていれば離れているほどその重要度は高まるといえます。
歌の話題などを切り口にして会話を引き出し、聞き上手に徹することができれば、お客さんは十分に満足し、あなたのことを気に入ってくれることでしょう。
言葉遣いに注意
しかし、年が離れているお客さんに対しては、必ず気をつけなければならないことがあります。
それは、言葉遣いです。
年齢が近いお客さんならば、友達感覚になって長く付き合うという戦略もありますから、同世代に話すような言葉遣いで話しても問題ありません。
しかし、年齢が離れているお客さんに、「ヤバいよねー!」「マジですか?」「ウケるんですけど」というような言葉遣いをしていると、うんざりされることが多いのです。
元気で社交性があるのは良いのですが、言葉遣いで一気に残念な印象になってしまいます。
特に、年配になればなるほど礼儀には厳しいものですから、返事の仕方やお礼の言い方を気にするものです。
クラブならば、この辺のことは非常に厳しく教育されますし、言葉遣いは気をつけて当たり前な世界ですから、お客さんから怒られることもあります。
しかしキャバクラでは、お客さんも「まぁキャバクラだし仕方ないか」と思って、目くじらを立てて怒るようなことは少ないでしょう。
しかし、「仕方ないか」という感想は、間違いなく満足度が低い証拠であり、好ましくないものです。
満足度の低いキャバ嬢を指名し続けるお客さんなんていませんし、結局は自分に返ってきます。
あとは、年が離れているからといって、萎縮しないことです。
お客さんの中には、若い子の考え方を勉強したいと思っているお客さんもいます。
そのようなお客さんは、会話が弾むことを望んでいますから、聞き上手になりつつも会話のキャッチボールを楽しむ姿勢を忘れないようにしてください。