キャバクラとはどのような場所でしょうか。
一般の女性にとっては馴染みない場所ですが、キャバクラとは、お酒を飲みに来た客をもてなす場所。
簡潔に言うならばそのような場所です。
キャバ嬢のイメージと現実の違い
キャバクラで大切なのは、このおもてなしの部分です。
お酒を提供することよりも、おもてなしに重点が置かれることが、キャバクラの特徴です。
キャバクラの世界を知らない女性がキャバ嬢になったばかりの頃は、「なぜキャバクラのお酒はこんなに高いのだろう?」と思うでしょう。
それは、キャバクラがお酒だけではなくおもてなしも提供しているからなのです。
実際、キャバクラに来る客がお酒を飲むことだけを目的としているならば、家で飲んでも、バーで飲んでも、居酒屋で飲んでもいいはずです。
そのようなお店ならば、1杯1000円以下で飲むことができます。
しかし、キャバクラでは何千円も、時には何万円もすることさえあるのです。
それでも客がキャバクラに行くのは、キャバクラで提供されるおもてなしに、それだけの価値があると思っているからです。
つまり、何万円もの価値があるおもてなしをしていることになりますが、だからといってものすごいおもてなしをしているというわけではありません。
キャバ嬢たちがしているおもてなしの基本は会話の相手です。
客の酒がすすむように、また客が十分にくつろげるように話を盛り上げ、場の雰囲気を和ませるのがキャバ嬢の仕事なのです。
こういうと、いまだキャバクラの仕事をしたことがない人は、「お酒を飲んで、話相手をするだけでお金がもらえるなんて、なんていい仕事なんだろう」と思う人もいるでしょう。
しかし、あくまでも接客ですから、単にあなたが友達とカフェで話しているようにぺちゃくちゃと話しているのではありません。
普通の仕事をしている人ならば、上司と話をしたり、取引先の人を接待することがあるでしょうが、キャバ嬢が客と話すときにもそれと同じような緊張感をもって仕事をしています。
決して楽なものではありません。
たまに、お酒が好きだから、お酒を飲みながら仕事ができるならという理由からキャバ嬢になる人もいますが、単にお酒が好きなだけではキャバ嬢は務まりません。
また、キャバ嬢という仕事は色気で客をたぶらかす悪女の仕事と思っている人もいるかもしれませんが、これも誤解です。
もちろん、客が疑似恋愛を楽しんでいることを利用することもありますから、「たぶらかしている」側面が全くないわけではありませんが、決してキャバ嬢のメインの仕事というわけではありません。
キャバ嬢のメインの仕事はあくまでもおもてなしであり、おもてなしができないキャバ嬢はどんなに美人であろうとも決して売れっ子になることはできません。
美人だから売れるわけではない
キャバクラは華やかな世界ですから、キャバ嬢は美人ばかりと思っている人も多いでしょう。
しかし、びっくりするような美人ばかりが働いていると思うならば誤解です。
顔は中の上、60点くらいのルックスがあれば全く問題ありません。
たしかに、美人キャバ嬢もいます。
モデルやレースクイーンをやっているものの、それだけではたくさん稼ぐことはできないのでキャバ嬢を副業でやっているというキャバ嬢もいるのです。
しかし、実際には普通の女の子もたくさんいるのがキャバ嬢の世界です。
また、美人なキャバ嬢こそが売れっ子キャバ嬢になれると思い込んでいる人もたくさんいるでしょうが、これも誤解です。
普通の世界ならば、美人であればあるほどモテる可能性は高いでしょう。
しかし、キャバクラの世界では、美人だからと言って人気になれる世界ではありません。
それどころか、キャバクラの世界では美人が不利に働くこともあるのです。
なぜ不利になるのか?
他の女の子からねたまれるという話ではありません。
キャバクラはじめじめした女の世界と思われがちですが、意外とカラッとしているもので、可愛い女の子をねたんでいじめるなどということはほとんどありません。
いじめが起こることも皆無ではありませんが、他のキャバ嬢の指名客を枕営業などの汚い方法で奪ったなどという事でなければ、まずいじめなどはあり得ないことです。
美人が不利になるというのは、美人過ぎる女性というのは、男性から近寄りがたいと思われかねないからです。
実際、私が行ったことがあるお店にも、びっくりするような美人がいました。
容姿端麗でスタイルも良く、衣装もおしゃれで、まさに完璧な美女です。
しかし、あまり成績は良くありません。
そのキャバ嬢に接客を受けると、男性は萎縮してしまって、会話をあまり楽しめなくなるからなのです。
彼女の性格に問題があったわけではありません。
優しく、気さくなキャバ嬢でした。
しかし、美貌が邪魔したために客は彼女の内面に気づくことができなかったのです。
これが、美人過ぎることが不利になるという事です。
このことは、女性からしてみても分かると思います。
女性も、完璧なイケメンを前にすると落ち着かないでしょう。
話しかけられても、冗談を言われても、上手く笑えない人が多いと思います。
うまく受け答えもできず、楽しくないわけではないのですが、話し終わってみると疲れることでしょう。
これと同じように、キャバ嬢の人気は美貌に一致しないのです。
売れっ子ホステスはここが違う
多くのお店では、キャバ嬢のやる気を鼓舞するために、各キャバ嬢の成績をランキング形式にし、売上の多い順にナンバー3くらいまでを表彰しています。
しかし、ナンバー3までに飛び切りの美人がランクインするというのはあまりないことです。
ではどのようなキャバ嬢が上位にランクインするのかと言えば、一言でいうと雰囲気の良いキャバ嬢です。
ナンバーに入るキャバ嬢というのは、その女性がいるだけでその場が明るくなり、知らないうちに楽しい世界に引き込まれる、そんな雰囲気を持っているキャバ嬢です。
新人キャバ嬢たちはそんな様子を見ると、「なんであの人たちはあんな雰囲気を持っているのだろうか」「どうすればあのような雰囲気を持っているのだろうか」と思うものです。
ナンバーのキャバ嬢がどう接客しているのか、どんな話をしているのか、どう振る舞っているのか、注意深く観察していると、いろんなものが見えてきます。
ナンバーに入るキャバ嬢を観察してまず見えるのは、卒なく接客する様子です。
客の言うことは一言も聞き逃すことがなく、客の言ったことは忘れません。
また、客の表情の変化は、些細な変化でも見逃しません。
客の癇に障るようなことは絶対に言いませんし、人格否定につながる可能性があることは必ず避けます。
不愉快に思われることはしませんし、自分が言ったことも忘れません。
客も無意識にこのことを分かっていて、安心して接客を受けることができます。
では、どうすればそのように卒なく振る舞うことができるようになるのでしょうか。
卒ない振る舞いのキーポイントとなるのは、気配り・心配りです。
売れっ子キャバ嬢は、とにかく周りに気を配ることを忘れません。
それも、注意深く観察しなければそれが分からないほど、さりげない気配りです。
しかし、さりげないのですが、会話の中の一言一言、しぐさの一つ一つのなかに気配り、心配りが行き届いているのです。
客に対してそうであるのはもちろん、新人のキャバ嬢に対しても気配りが行き届いています。
新人のキャバ嬢がリラックスできるように「今日のドレス、似合ってるわね」などと声を掛けてあげます。
そうやって他のキャバ嬢を気遣うものですから、他のキャバ嬢は「この人は私のことを見てくれているんだ。うれしい。この人の役に立ちたい」と言う気持ちになります。
人をこのような気持ちにさせることこそ、人気キャバ嬢の持つ「雰囲気」の力なのです。
売れっ子キャバ嬢が売れるのは、生まれつきオーラがあるからではありません。
売れっ子キャバ嬢の周りが明るくなるのは、彼女たちが周りの人に元気を与えているからです。
彼女の持っているオーラは、皆の元気によって生まれるものなのです。
ほめ上手はどこから生まれる?
上記の様に、売れっ子ホステスは心配りと気配りの達人です。
彼女たちは、心配りと気配りの達人になるために努力を払っています。
売れっ子キャバ嬢は人を褒めるのが上手ですが、それもその結果です。
売れっ子キャバ嬢は総じて褒めることにおいても達人ですが、しかし、褒める達人になるためには、褒め言葉をたくさん覚えたところでどうにもなりません。
大切なのは褒め言葉ではなく、心配りと気配りなのです。
褒め言葉と言われると、多くの人は「すごい!」「かっこいい!」「ステキ!」などと言った感嘆の言葉を思い浮かべるでしょう。
実際、多くのキャバクラでは「え~、すご~い!」などといった言葉をよく耳にします。
しかし、この様な単調な褒め言葉を繰り返しているのは、大抵は新人キャバ嬢です。
ベテランキャバ嬢や売れっ子キャバ嬢になると、このような褒め言葉を使いません。
また、新人の頃にはそのような褒め言葉を使っていたキャバ嬢も、経験を積んでいくにつれてこんな褒め言葉は使わなくなります。
褒めるという事は、本当は言葉ではないということが分かるからです。
確かに、売れっ子キャバ嬢は皆ほめ上手ですがが、それは決して彼女たちが意識的にやっていることではありません。
本人からしてみれば、気配りと心配りの延長でしかないのです。
彼女たちが心がけているのは、その場の雰囲気を壊さずに盛り上げようということだけで、褒めて持ち上げよう、機嫌をとろう、おだてようなどとは思っていません。
むしろ、褒めようと意識すると会話がぎこちなくなってしまい、雰囲気が悪くなってしまうものです。
新人キャバ嬢を見ていると分かることがありますが、褒めよう褒めようとすると、動きがぎこちなくなって、会話までぎこちなくなり、ミスの原因になることもあります。
饒舌なキャバ嬢になると、よくそんなうまいことが言えるなと思ってしまうほど、ぽんぽんとほめ言葉が出てくるキャバ嬢もいます。
そんなキャバ嬢に憧れることもあるかもしれません。
しかし、これは真似しようとしたところで誰もが出来ることではありませんし、無理に真似をすると「調子のいい奴だな」とお調子者と思われるのが関の山で、中には「俺のことを馬鹿にしてるのか?」と思う人も出てきます。
そうなってしまえば本末転倒です。
ほめ上手は饒舌ではなく、気配りと心配りによって生まれる結果です。
気配りと心配りがないままに発される褒め言葉は、失礼になるだけです。
うまく言葉にできないのはなぜ?
キャバ嬢のなかにはこんな子がいます。
気配り、心配りをしているつもりなんだけど、うまく言葉にできない。
キャバ嬢に限らず、こう考えている女性は多いことでしょう。
しかし、スムーズに言葉が出てこないことがあったとしても、コミュニケーションの基本は会話ですから、言わないでも分かってほしいと思うのは無理なことです。
音楽や絵などをなりわいとしている芸術家であれば、言葉を使わずとも自分の気持ちを表現することができるかもしれませんが、普通の女性やキャバ嬢には言葉を使うほかありません。
そのためには、言葉にする努力をする必要があるのですが、時として努力の方向性を間違っていることもあります。
例えば、売れないキャバ嬢の中にはこんなことをいうキャバ嬢もいます。
気配りと心配りをしているつもりなのですが、うまく言葉にならないんです。
おそらく、このキャバ嬢は良い表現ができない、いい言葉が見つからないと悩んでいるのですが、コミュニケーションにおいて本当に重要なのは表現や言葉ではありません。
なぜならば、コミュニケーションの本質は心を伝えることだからです。
基本的なことは、思ったことをそのまま素直に言葉にすることです。
もし難しい言葉、気取った表現などを使ってしまうと、会話が表面的な物になりかねず、気持ちが通じないことも出てきます。
しかし、このようなことを言えば、「その、思ったことをそのまま言葉にするというのが難しいんです」と思う人も多いでしょうが、それは「そのまま」の使い方を誤っているからです。
つまり、怒り、嫉妬、軽蔑、軽侮などといったマイナスの感情をそのまま言葉にするからこそ失言や暴言になってしまうのです。
感謝の気持ちや感動などのプラスの感情をそのまま伝えれば、何の問題もありません。
つまり、コミュニケーションの際に重要となるのは、肯定的な気持ちでコミュニケーションをとっているかどうかです。
このことを常に心掛けていることが大切で、この点に努力することが大切なのです。
もしあなたが「うまく言葉にできない」と思っているならば、それは言葉そのものに問題があるのではなく、気持ちの持ち方に問題があるのです。
言葉にできないと思っているならば、おそらく心の中で「私がこう言うことで変に思われたらどうしよう」とか「こんなことを言って嫌われたらどうしよう」と迷っているのです。
だからこそ、言葉がうまく出てこないのです。
これは、男女関係においても同じことが言えます。
もし相手の男性のことが好きだというはっきりとした気持ちがなければ、上手く気持ちを表現することはできないでしょう。
しかし、この男性が好きだ、付き合いたいと心に決めていたならば、どのような会話をしても楽しいと思えるものです。
多くの人が、そのような経験をしたことがあることでしょう。
言葉というのは、あくまでもコミュニケーションの道具に過ぎません。
人とコミュニケーションをとる時には、どのような気持ちでその人と接しているかが大切です。
否定的な感情があれば、どれほど相手を持ち上げてもいい結果につながることはありません。
ただのゴマすりになってしまうのです。
ほめることは認めること
人とコミュニケーションを取る際には、言葉より気持ちが大切だという事を解説しました。
これこそ、売れっ子キャバ嬢がついた席では、客もキャバ嬢もパッと明るくなる理由です。
彼女たちが肯定的な気持ちで接客しているからこそできることです。
褒め言葉というのは、肯定的な気持ちから生まれるものです。
褒め言葉が否定的な気持ちから生まれたものならば嫌味と感じることもありますが、肯定的な気持ちから生まれた褒め言葉は相手を心地よい気持ちにさせることができます。
これは、褒める側が抱いている肯定的な気持ちが伝わるからです。
相手のことを肯定的に捉えていなければ、真実の褒め言葉は出てきません。
もしそれらしき言葉が口から出てきたとしても、それが本心でないからこそ、嫌味に聞こえてしまうのです。
考えてみましょう。
例えば、客が新しいネクタイをして来店し、あなたはそれに気づいたとします。
そういうとき、キャバ嬢は「ステキなネクタイね」と言いますが、もし本当にセンスがいいとか、良いネクタイだと思って褒めるのと、ダサいネクタイだ、悪いネクタイだと思って褒めるのとでは、まず言葉のトーンが変わります。
発した言葉と、本来その言葉に伴うトーンが異なるならば、相手に違和感が伝わるものです。
もちろん、キャバ嬢のほうでは気持ちを隠しているつもりなのですが、隠せずに伝わってしまうことが良くあります。
こういうと、「そうはいっても、いつでも肯定的な気持ちでいるなんてできるの?」と思う人もいるでしょう。
しかし、答えは簡単、イエスです。
相手のことを認める気持ちがあれば、肯定的な気持ちになれるものです。
肯定するということは、相手を認めることに他ならないのです。
新人キャバ嬢がベテランキャバ嬢から「頑張っているね」と声を掛けられるとそれだけで嬉しいものですが、それは先輩キャバ嬢が自分を見てくれていると思っているから、そして先輩キャバ嬢が新人の自分を一人のキャバ嬢として“認めてくれている”と感じたからです。
売れっ子キャバ嬢は、相手を褒めることを通して、相手を認めていることを伝えていたのですね。
相手を肯定することは相手を認めることであり、褒めることは認めていることを伝えるための一番の方法なのです。
特に、最近は「認められたい」と強く思っている人が多いようです。
特に、若い人の中では承認欲求が強くなっています。
実際、承認欲求を満たすためにキャバ嬢になる女性も増えています。
社会全体が豊かになって物質的な欲求が満たされると、それとは逆に孤独感が強くなっているのです。
キャバ嬢になれば、確かに認められた気分を味わうことができるでしょう。
しかし、これは一時的なものです。
新人のうちは、客から「かわいいね」「若いね」「今度、一緒に遊びに行かない?」などと言われ客からたくさん声を掛けられることでしょう。
しかし、あくまでもこれはちやほやされているだけのことで、本当の意味で認められたという事とは違います。
本当に認められたいならば、本気でおもてなしをする必要があります。
相手に興味を持とう
あるお店のミーティングに立ち会ったことがあるのですが、こんな会話がなされていました。
ベテランキャバ嬢がこういいました。
大切なのは言葉じゃなくて、お客さんとどう接しているかだよ。私はこのお客さんを認めているんだっていう気持ちがなければ、どんなに相手を褒めても嘘になってしまいます。
すると、ある新人キャバ嬢が言います。
○○さんの話はよく分かるんですけど、お客さんにも色々な人がいますよね。中には、どうしてもこの人だけは認めたくないと思っちゃう人もいます。そういうときはどうしたらいいんですか?
おそらくこの会話、どんなキャバクラでも見られるのではないでしょうか。
キャバ嬢の仕事は客商売であり、客を選り好みすることはできません。
嫌な客が来ることもあれば、相性がいい客が来ることもあります。
そして、どのようなタイプの客にも同じように付き合いをしなければなりません。
しかし、現実は新人キャバ嬢が言う通り、たとえ売れっ子キャバ嬢といえども、苦手なタイプの客もいるでしょう。
しかし、売れっ子キャバ嬢は苦手な客との接客も解決することができます。
では、どうするか。
私は会社経営をしている友人からこんな話を聞いたことがあります。
会社にはいろんな人材がいる。優秀な奴もいれば愚鈍なやつもいる。
しかし、いくら優秀な奴でも2~3割はダメなところがあるもんだ。
愚鈍な奴というのは、7~8割がだらしなかったり、落ち着きがなかったり、スケベだったりとどうしようもない奴だと思うもんだが、そういう奴に限って残りの2~3割が魅力的なんだな。
人間ってぇのは面白いもんだよ。
この言葉の通り、あなたが苦手だ、認めたくないと感じているタイプの客でも、どこかに魅力的なところを持っているものです。
だから、コミュニケーションをとる時には、「苦手だけど、この人にも絶対にいいところがあるんだ」と信じて、その人の光る部分を探そうと努力することが大切です。
そうすれば、苦手な相手や認めたくない相手との付き合いがうまくいくようになります。
こういうと、「本当にそうだろうか?」と思うかもしれませんが、これは真理です。
人間は不思議なもので、もし相手が自分に興味を持っているならば、嫌うことができないのです。
むしろ、自然とその人に好意を抱くようになります。
思い当ることがある人も多いでしょう。
「この人、私のことが嫌いなんだろうな」と思ってしまうと、こちらもよそよそしい態度になってしまいますし、冷たい態度を取ってしまう事でしょう。
相手に興味を抱くことなんてありません。
しかし、「この人は私のことが好きなんだな」と思えば、安心して付き合うことができますし、一緒にいるのが楽しくなります。
これは相手が人間でなくとも同じことです。
人懐っこい犬が、尻尾を振りながら近づいて来れば、よほど精神性に問題がない人ならばその犬を蹴っ飛ばそうとは思わないでしょう。
撫でてあげたくなるはずです。
これは誰でも同じことです。
ですから、接客の時にも「あなたに興味がある」という気持ちと態度で接することができれば、相手の態度も柔らかくなり、「苦手なタイプ」とはとらえずに「自分に興味を持ってくれている人」と思ってくれます。
ほら、問題が解決したでしょう。
ちなみに、相手に興味があると伝える方法は簡単なものです。
会話をするとき、「○○さんって、そんなことが好きだったんですか」「○○さんって、そんな趣味があったんですか」など、相手の意外な一面を見つけたときに感嘆のコメントを述べるだけです。
こういわれるだけで、相手は「この子は俺に興味があるんだな」と思ってくれるものです。
決めつけないことの大事さ
ここまで、いつも肯定的な態度で客に接することや、どんな客でも興味を持つことが大切なことだと書いてきました。
一流のキャバ嬢はいつもこのことを心がけているものです。
しかし、それ以外にも大切なことがあります。
それは、客との会話を楽しむという事です。
キャバ嬢は仕事として客と接しているのですから、もちろん楽しくないこともあるでしょう。
面倒くさい客だと思うこともたくさんあると思います。
しかし、楽しむ姿勢を持っていなければ、仕事がどんどん苦痛になります。
仕事に苦痛だけしか感じなくなれば、その感情は確実に相手に伝わってしまい、相手も不快に思うようになります。
そうなると、相手は不快感をあらわにしますから、あなたもますます接客が苦痛になります。
この悪循環にはまり込み、キャバ嬢を辞めてしまう女の子は非常に多いのです。
特に、最近の水商売事情を見ていると、コミュニケーションが楽しめないと思っているキャバ嬢が非常に多くなっているようです。
これはキャバ嬢だけではなく、若い女の子全体に言えることのようにも感じます。
そして、そのように感じている女の子には共通しているものがあります。
それは、不要なまでに「決めつけ」をしていることです。
「私にはできません」「嫌です」「私はそれに向いてません」などなど。
なんでも決めつけてしまうのです。
そして、否定的な決めつけばかりです。
例えば、キャバクラ店の中でも協調性が高いキャバ嬢が「みんなでボーリングに行こうか」と言えば、「私は行きません。ボーリングは苦手なんです」。
「今度、皆でコスプレで接客してみない?盛り上がるかも!」といえば「私はいいです。コスプレは嫌いなので」。
このように、何かに挑戦してみようという気持ちがないのです。
男性観にしてもそうです。
「結局、男の人ってこうでしょう?」という決めつけがあります。
一流のキャバ嬢が「それはあなたの決めつけだよ」とたしなめても、「私が付き合った男はみんなそうでしたから」と言います。
そこで「皆って何人?」と聞くと、「5人です」なんて言うんです。
世の中には何十億人という男性がいるのに、たった数人を見てすべて分かったように決めつけているのです。
そのような女の子は、たいてい人間関係で悩んでいるものです。
しかし、見る人が見れば、悩むのは当然の結果です。
そういう女の子は、決めつけによって自分の世界を狭くしてしまっているからです。
自分で可能性を潰しているだけです。
しかし、若いキャバ嬢の中にも、決めつけをしない子はいます。
そのような子の特徴を観察してみると、好奇心旺盛であることが分かります。
なんでもやってみよう、なんでもみてみようという意欲に満ち溢れています。
そして、売れっ子に近づいていきます。
好奇心は偉大です。
好奇心があれば、一つの仕事を続ける中でも常に上を目指し続けることができます。
そして、実際に上に登っていくことができます。
コミュニケーションをうまくするためには、好奇心をもって楽しむ姿勢がなければうまくやることはできません。
コミュニケーションによってはなかなか楽しみを見つけられないこともありますが、楽しくないと決めつけてコミュニケーションをとってしまえばそれで終わりです。
もし、あなたがキャバ嬢として働いていて、客とのコミュニケーションがうまくいかずに悩んでいるならば、何でも決めつけていないかをチェックしてみましょう。
「気にかけている」を伝えよう
ここまで読んで、ほめ上手なキャバ嬢たちが、普段どんなことを心がけているかが分かったと思います。
ほめ上手なキャバ嬢は、すごく言葉が達者な女性と思われがちですが、ただそう見えてしまうだけで、実際には違います。
彼女たちが意識しているのは気配りと心配りであり、それがしっかりしていればほめ上手は後からついてきます。
しかし、まだまだ未熟な新人キャバ嬢が、いきなり気配りと心配りの上手な一流キャバ嬢を目指したところで、無理があります。
一流になるためには、それなりの年季がいるものです。
また、気配りと心配りばかりを考えていると、かえってコミュニケーションがうまくいかなくなることもあります。
色々と気を遣おうと思うあまり、あれをしなければならない、これもしなければならないと落ち着きがなくなり、会話にならなくなるのです。
なぜそんなことになるのでしょうか。
本人には分かりにくいのですが、このような気配り・心配りがいい結果につながらないのは、目的と手段を取り違えているからです。
気配りと心配りは、あくまでもより質の高いコミュニケーションをとるためにするものであり、それ自体が目的になってしまうのは間違いです。
目的と手段を取り違えると、せっかく気配りと心配りを頑張ったところで、それは押しつけになってしまいます。
いくら気配りや心配りをしても、それが押しつけならば人間関係がうまくいきません。
あなたも、「○○してあげる」といった態度でなされる心配り・気配りを受けると、いい気はしないでしょう。
人によっては、「気をつかってんじゃねぇ」「同情すんじゃねぇ」などと思ってしまいます。
そこで重要なのが、「あなたのことを気にかけています」という気持ちを伝える努力をすることです。
具体的には、こんな話があります。
あるキャバクラ店に、ある常連が2週間ぶりに来店しました。
そこで、キャバ嬢がこのように言いました。
いらっしゃい、○○さん。先週の旅行はどうでしたか?
こういわれた客は、きょとんとしています。
俺、旅行に行くなんて言ったっけ?
え、この前来た時に言ってましたよ。
よく覚えてるね。
○○さんが言ったことですもの。
そう?なんだかうれしいな。
客は大満足です。
なぜ客が喜んだかと言えば、客が何気なく言った旅行の話をキャバ嬢が覚えていたからです。
それだけではなく、キャバ嬢がそれを言葉にしたことで「あなたのことを気にかけています」と伝わったからです。
これを読んで「旅行の話題なんてあんまりでないし、チャンスはそう多くないですよね」と思う人も多いかもしれませんが、ここで重要なのは「旅行」ではありません。
きっかけは旅行である必要はないからです。
例えばこんな話もあります。
○○さん、お久しぶりです。
最近忙しかったけど、やっとこれたよ。
△△ちゃんと会いたいなって話してたんですよ(△△ちゃんはその日出勤していないキャバ嬢)
△△ちゃん、今日はいないの?
今日はお休みです。△△ちゃん、残念がるだろうな。会えなくて。明日ならいるんですけどね。
じゃぁ、明日も来るよ。
このように、会話が弾みました。
そして、この客は本当に翌日も来たそうです。
この客がなぜ二日連続で来たかと言えば、キャバ嬢の言葉から「あなたがいないときにも、あなたのことを気にかけていましたよ」という気持ちが伝わったからです。
以上の様に、「あなたのことを気にかけています」という気持ちを伝えるチャンスはどこにでも転がっています。
大切なのは、普段から本当に相手のことを気にかけていることです。
影ぼめの技術
ここまでほめ上手になることの重要性を書いてきましたが、いきなりほめ上手を目指してもうまくいくことはないでしょう。
また、いきなり気配りと心配りができるようになろうとしても、これもうまくいきません。
そのため、とりあえずは「あなたのことを気にかけています」という気持ちを伝えるところから始めてみるのが良いと思います。
このように書くと、「そういうものなんだな」というキャバ嬢も多い一方で、「ハードルが高すぎる。もっと超初心者向けのコツはないの?」とおもうキャバ嬢もいるでしょう。
そういうキャバ嬢の言い分を聞いてみると、「相手のことを気にかけることはできるんですけど、言葉にするのはやっぱり無理です。だって、相手は20歳も30歳も年上で、気にかけようと思っても緊張して言葉が出てきません」と言います。
これは無理もない話です。
相手が同世代であれば難なく話せる人も、かなりの年上の人と親しげに声を掛けるのは難しいものです。
これが全く気にならない、平気だというキャバ嬢もいるのですが、新人の頃からそれができるキャバ嬢は非常にまれです。
しかし、親と子くらい年が離れた相手への接客のこの問題も、解決できない問題ではありません。
相手が目の前にいると言葉が出なくなることが問題ですが、相手がいない場所でほめることで解決できるからです。
その場にいないのにほめても意味があるのかと疑うかもしれません。
これを影ぼめというのですが、非常に効果的な方法です。
皆さんも、影ぼめをされたことがあるのではないでしょうか。
例えば、「この前、○○さんがあなたのことをほめてたよ」といった具合にです。
影ぼめをされたことがある人は分かるかもしれませんが、直接ほめられることも嬉しいものですが、間接的に伝わるともっと嬉しいものです。
影ぼめは直接褒めるよりも何倍もの効果があるのです。
したがって、相手が目の前にいるとうまく話すことができないならば、相手がその場にいない時に思い切りほめればいいのです。
影でほめたところで、相手に伝わらなければ無意味だといわれそうですが、そんなことはありません。
影ぼめが効果的だった例はいくらでもあります。
あるキャバ嬢が、よく来店するジャーナリストのブログを読み、それが面白いという事をお店のマネージャーに話していたことがありました。
次にそのジャーナリストが来店した時、マネージャーが
△△ちゃん、○○さんのブログにハマっているみたいですよ。プリントアウトして私に持ってきて、読めって言ってくるんです。
と伝えました。
こういわれたジャーナリストは大喜びでした。
そして、プリントアウトされた記事を見てみると、その記事はもう2年前くらいに書いたものだったので、そのキャバ嬢がブログを全部見てくれたことも分かりました。
そのジャーナリストは、それ以来△△ちゃんしか指名していないとのことです。
「影でほめても相手に伝わらなければ無意味」というのは確かにそうなのですが、この例のように色々な客を褒めるようにしていると、いつかどこかで誰かに伝わり、いい結果を生むものなのです。
影ぼめが相手に伝わるためには、その内容が具体的であることが必要です。
影ぼめは具体的にしましょう。
素直な言葉で伝えよう
新人キャバ嬢はベテランキャバ嬢から接客の技術を学び取ろうとするのですが、上手くいかないことがあります。
ベテランがさっと発する褒め言葉を思い出そうとするものの、思い出せないことがよくあるのです。
これは、新人キャバ嬢の記憶力が悪いからというわけではありません。
本当にほめ上手はほめ言葉というのは、印象に残らないものだからです。
なぜ印象に残らないかと言えば、それは会話が自然だからにほかなりません。
新人キャバ嬢は、どんな話をしていたかは覚えているものの、言葉だけを切り取ることが難しいと思うのですが、コミュニケーションとは本来そのようなものです。
大切なのは言葉そのものよりも、言葉に込められた気持ちですから、言葉だけを切り取ったところでなんら意味はありません。
ほめ言葉が大切と言われると、映画のセリフの様な秀逸な言葉を言わなければならないと思っているかもしれませんが、褒め言葉はそのような大げさな物ではありません。
確かに、そのようなセリフを言うと印象に残る事でしょうが、そういう言葉が相手の胸にとどいているかというと疑問です。
相手の心に届く言葉というのは、素直な言葉です。
素直な気持ちで発した言葉は相手の心に響くものなのです。
コミュニケーションで問題となるのは、素直な気持ちでいられるかどうか、誰にも偏見を持たずに向き合うことができるかどうかなのです。
言葉でいうのは簡単でも、これは容易なことではありません。
偏見や決めつけ、否定をした方がラクなことが多々あるからです。
私も人間関係で痛い思いをしたことがありますから、信頼するよりも信頼しない方がラクだという事は知っていますし、「あいつもどうせそんなもんだろ」と否定的になった方がラクだということを知っています。
そのようになってしまっているキャバ嬢も多いでしょう。
しかし、そのようなことを続けていれば、自分の世界を狭くしてしまうだけ、自分の可能性を潰してしまうだけです。
人を信頼しすぎることが時として不利益につながる仕事をしているならば別ですが、キャバ嬢は素直な気持ち、偏見をもたないこと、そういったことが人気につながり成績に繋がるのですから、ぜひそうするように努力すべきでしょう。
そのためにも、ほめ上手の精神は必要です。