あるキャバクラであった話。
キャバクラ店に勤めて今や売れっ子となったサヤカちゃんがまだ新人だった頃の話です。
キャバ嬢にとって毎年恒例の最も大きなイベントといえば、バースデーイベントです。
各キャバ嬢の誕生日は盛大に祝われるものであり、誕生日を迎えるキャバ嬢の指名客は誕生日にプレゼントを用意してお祝いするものです。
キャバクラのおもしろ話~プレゼント騒動~
サヤカちゃんがキャバ嬢になってすぐの頃、彼女にも誕生日が訪れました。
慣れたキャバ嬢ならば「ヴィトンのバックが欲しい!」とか「エルメスのスカーフが欲しい!」など、指名客ごとに欲しいものを買えることで効率よくプレゼントを獲得しようとするものです。
そのような「おねだり」が行われていることは客の方でも気づいているのですが、客は返って他の指名客よりも喜ばれたいという思いから奮発するようになるため、キャバ嬢たちは見事に欲しいものをゲットしていくのが普通です(中にははやりもののバッグをすべての指名客に要求し、何十と集まったバッグを、一つを残してすべて中古ブランドショップに売却してお小遣いを得るキャバ嬢もいるようです)。
しかし、サヤカちゃんはそのようなことを知らない新人でした。
彼女は田舎から東京に出てきたばかりでまだ部屋の中の生活用品がそれほどそろっていなかったこともあったため、プレゼントしてもらうことを意図せずに、指名客たちに
炊飯器がほしいな~。
象印とか良いですよね。
あれって釜がすごくいいんですよね。
などと話していたそうです。
本人はプレゼントしてほしいと思っていたわけではありません。
ただ本当に必要だったという理由だけから話していたのです。
そして彼女は19歳の誕生日を迎えました。
指名客たちはみんなプレゼントをもって来店しました。
もうお判りですね。
みんな炊飯器をもってやってきたのです。
その数は数十台に上りました。
困り果てた彼女は店長に事情を説明し、一つ一つ慇懃に(プレゼントがダブったとできるだけ思わせずに)受け取り、その後同僚のキャバ嬢に炊飯器をプレゼントしました。
話題のIHジャーとのことで同僚のキャバ嬢も喜んで受け取り、その時は事なきを得たそうです。