一口にキャバ嬢と言っても、稼ぎは様々です。
たくさん稼ぐキャバ嬢もいれば、それほど稼げないキャバ嬢もいます。
その違いはどこから生まれているのでしょうか。
本稿では、稼ぎの大きな差を生む要因と、その歴史に迫っていきます。
キャバ嬢の給与格差
キャバ嬢は女性が稼げる仕事の代表といっていいものですが、だからと言ってキャバ嬢になればどのような女性でも必ず大きく稼ぐことができるというわけではありません。
第一に、キャバ嬢になるためには面接に受かる必要があり、そのためには一定のルックスやスタイルといった外見的要素が求められます。
その後無事に受かったならば、接客技術が求められていき、技術を磨きぬいたキャバ嬢や天性の素質を持ったキャバ嬢が大きく稼いでいくことになります。
大きく稼ぐキャバ嬢は、毎月200万円も300万円も稼ぐ上流キャバ嬢であるのに対し、それほど稼げないキャバ嬢は20~30万円ほどということもザラにあり、これは上流キャバ嬢に対して下流キャバ嬢と表現してよいでしょう。
彼女たちの給与格差は10倍以上になることもあります。
しかも、上流キャバ嬢の勤務時間は下流キャバ嬢の半分程度であるにもかかわらず、これほどの差が生まれることもあるのです。
彼女たちの格差はどこから生まれるのでしょうか。
格差の原因は?
上流キャバ嬢と下流キャバ嬢の10倍以上の収入格差を左右する要因は何なのでしょうか。
まず、よく挙げられるのが容姿の差です。
上流キャバ嬢の方が下流キャバ嬢よりも美人だったり、可愛かったりするというものです。
確かに、高級キャバクラで働くキャバ嬢の方が、大衆キャバクラで働くキャバ嬢に比べて美人が多いというのは事実ですから、当然要因のひとつとして挙げられるでしょう。
しかし、それはほんの一面に過ぎないことです。
キャバ嬢は美人だから売れる、あるいは可愛いから売れるという単純なものではないからです。
今、下流キャバ嬢として働いているキャバ嬢が飛び切りキレイな容姿を手に入れ、接客技術を伸ばしたとしても、だからといって高級キャバクラで働けばすぐに月収200万円以上になるのかというと、そうではないのです。
Bは大衆店であり、ナンバーワンキャバ嬢でも月収100万円を越えることはありません。
その理由は、ポイントスライド制でも時給の上限が5000円と決められているからです。
つまり、上流キャバ嬢と下流キャバ嬢を分ける大きな違いは、勤めるお店のランクの違いということができます。
Hが勤めるお店は歌舞伎町の高級店であり、Eが勤めるお店は沿線の大衆店であることで大きな差が生まれているのです。
実際、お客さん一人当たりのセット料金を見ても、A店は1時間8000~12000円、VIPルームならば15000円であるのに対し、B店は1時間2000~6000円、VIPルームはなしです。
実際、キャバクラのスカウトマンは、女の子をスカウトする際にランク分けを行います。
つまり、キャバ嬢の時給とお店のランクを考慮しながらスカウトしているのです。
スカウトマンとランク
スカウトマンがスカウトするとき、保証時給はその女の子のクオリティに合わせて、
- 高級店→4000~6000円(あるいはそれ以上)
- 中級店→3000~4500円
- 大衆店→2500~3500円
と考えています。
求人雑誌などを見て自ら応募してくる女性は少数派なので、キャバクラの人材確保は主にスカウトマンに頼っています。
だからこそ、クオリティが高くなるという傾向も生まれてきます。
つまり、キャバ嬢たちはスカウトされた時点で高級店・中級店・大衆店のランク分けをされており、保証時給も大体決まってしまうということです。
言い換えるならば、スカウトされた時点で上流キャバ嬢になるか下流キャバ嬢になるかが決まってしまう可能性が高いのです。
あるスカウトマンの話によれば、六本木や歌舞伎町の高級キャバ嬢では、面接の際に「この子には保証時給5000円の価値がある」と判断した場合しか雇わないことも多いそうです。
もちろん、高級店と大衆店でセット料金に大きな違いがあり、それが保証時給に影響しているからと言って、それがHとEのように10倍以上の差を生むわけではありません。
この疑問に応えるためには、まず「なぜHは250万円も稼げるのか?」ということ、つまり「なぜ高級キャバクラの売れっ子キャバ嬢は月収200万円も300万円も稼げるのか?」ということを考えていく必要があります。
以下でその疑問に答えていきます。
上流キャバ嬢になる条件
私はこのような記事を書いている職業柄、色々なキャバクラで調査を行っています。
高級店・中級店・大衆店のいずれにも足を運び、そこで働くキャバ嬢たちや店長をはじめとした男性スタッフたち、スカウトマンたちに会い、色々なインタビューもしてきました。
すると、この疑問を解決するヒントがいくつも見つかりました。
私がたどり着いた答えは、
高級店の売れっ子キャバ嬢はお金持ちのお客さんから多額の売り上げを上げている
という事でした。
つまり、高級店の売れっ子キャバ嬢たちは富裕層に特化したビジネスを行っているのです。
格差社会が叫ばれて久しい昨今、金持ちはますます富み、貧乏人はますます貧乏になっています。
そして、富裕層に特化したビジネスは、キャバクラ以外でも色々なところで行われています。
例えば、年収2000万円以上の人が会員になれるフィットネスクラブ、高所得者御用達の高級タワーマンション、超高級外車などがそれに当たります。
その他にも様々な業種で取り組まれているビジネスモデルであり、高級キャバクラのキャバ嬢たちはこのブームが起こるずっと前から、富裕層に特化したビジネスを行ってきたのです。
キャバクラにおける高級店は、主に歌舞伎町、六本木に存在しています。
歌舞伎町と六本木において、全部で60店舗ほどの高級キャバクラが存在し、本物の高級有名店になるとより絞り込むことができます。
キャバクラの総店舗数に正確なデータはないのですが、小箱キャバクラまで合わせれば歌舞伎町と六本木で350店舗くらいは存在しているとされています。
このうち60店舗が高級店であり、高級店に富裕層が集中しています。
東京都内でキャバクラを道楽の一種と認識しているお客さんの大部分が、歌舞伎町と六本木の高級キャバクラに集中しているのです。
このことに関して、キャバクラ関係者がこんなことをいっていました。
昔は、お金持ちが飲みに出かける場所といえば銀座だったんですけどね。
でも、ここ15年くらいでかなり変わりましたよ。
遊び方も変わったし、それに伴って遊ぶお店も変わったんです。
IT社長とかネットビジネス関係者とか、最近では20~30代の若手でも富裕層っていますよね。
そんな若いお金持ちからしてみると、銀座の高級クラブは堅苦しくて楽しくないってことも多いんです。
それよりも高級キャバクラでパーッと遊びたいっていう。
歌舞伎町と六本木のどっちかに集中するということはなく、業種によって棲み分けがされていますね。
また、これもお金持ちによくみられる傾向なのですが、お金持ちのお客さんほどナンバー入りしているキャバ嬢、つまりそのお店で1~5位にランクされているキャバ嬢を指名する傾向があります。
お金持ちほど売れっ子が好きっていうのは確実にありますね。
お金持ちはプライドが高いですから。
特に若いお金持ちはね。
自分が指名しているキャバ嬢が人気者じゃないとプライドが許さないんですよ。
歌舞伎町と六本木で約60店舗の高級キャバクラがあり、それぞれのお店に5人のナンバーキャバ嬢がいるとすると、歌舞伎町と六本木で300人の売れっ子がいることになります。
この300人が、日本の富裕層の夜の遊び相手を勤めていると考えることができます。
そう考えれば、彼女たちが毎月何百万円も売り上げ、売上バック制によって200万円や300万円の手取りを受けとるというのは納得がいく話です。
以上のことから、上流キャバ嬢になるための条件は以下の3つであることが分かります。
- 歌舞伎町か六本木の高級店で働いていること
- ナンバー入りしていること
- ポイントスライド制ではなく売上バック制で給料をもらうこと
キャバ嬢の給料が高騰した事件
もちろん、このほかにもキャバ嬢が稼げるようになった事件、社会問題もあります。
キャバ嬢の間では、稼げるのはキャバ嬢であり、客層が良いのは六本木と言われています。
今のように高級キャバクラの売れっ子が月に何百万円も稼げるようになったのは、ある時期から歌舞伎町でキャバ嬢の給料が大きく跳ね上がったことをきっかけにしています。
売上バック制という制度も、このころの高騰に合わせて作られたと言われているほどです。
この時期とは、2002年前後のことです。
この時期に大きくお金が絡んだ社会問題といえばピンとくる人がいるかもしれませんが、オレオレ詐欺とヤミ金が大いに騒がれた時期です。
この社会問題によって裏社会の富裕層が出現し、それが歌舞伎町のキャバクラで豪遊していたのです。
このことを詳しく知るためには、2002年ごろの歌舞伎町の状況を知る必要があるでしょう。
この前年にあたる2001年、歌舞伎町で大火災が起こり、40名余りの人がなくなったのを覚えているでしょうか。
明星56ビルの3階にある雀荘が火元となり、4階で営業していたセクキャバに火が回って大きな被害が出たのです。
90年代後半の歌舞伎町は射精産業都市とも言われており、風営法の許可を得ずに営業している性風俗店がたくさんありました。
しかし、この火災があってからというもの、違法性風俗店の取り締まりが強化され、一気に姿を消していきました。
それと入れ替わる形で、風営法の許可を得て営業するキャバクラが歌舞伎町の夜の顔になったのです。
2002年前後、歌舞伎町のキャバクラにはバブルが訪れました。
それがヤミ金バブルです。ヤミ金バブルの後にはオレオレ詐欺バブルが訪れ、2005年くらいまではヤミ金、オレオレ詐欺、架空請求などによって稼いだアウトローたちがキャバクラで豪遊していました。
ある意味、闇の富裕層がキャバクラを繁栄へと導いたのです。
最近、当時を知る元キャバ嬢に話を聞いたところ、こんなことを言っていました。
あのとき、若い兄ちゃんたちが良く来ましたよ。
チーマーっていうかギャングっていうかそんな感じの人達。
そういう柄の悪いのが歌舞伎町のお店でお金を使っていったんです。
この人たち、オレオレ(詐欺)の人達だったんですよね。
店長がそういってました。
『あいつら、オレオレ詐欺の連中だから、金で誘ってきても相手にするな』って。
若いのに一晩で何十万円もぽんぽんつかっていくし、高いボトルも次々に入れるからおかしかったです。
そういうのが何組も来てましたから。
怖かったですね。
当時のデータを見てみると、このヤミ金やオレオレ詐欺や架空請求と言った社会事件による被害総額は2002年から毎年数百万円規模に上っていました。
そこで得たあぶく銭を毎晩ぽんぽん使っていたというのも納得のいく話です。
また、この業界にかなりの数のアウトローが参入していたのは本当の話です。
実際に、あるヤミ金融を経営しているオーナーと仲良くしている店長から、こんな話を聞きました。
あいつら、若いのに荒稼ぎして、よく歌舞伎町で遊んでくれましたよ。
とりあえず酒飲みたけりゃキャバクラですからね。
居酒屋とかシケたところで飲むって考えないんですよ。
でも六本木のキャバクラだとそういう怪しいのは入れないから、歌舞伎町に流れてくるんです。
あぶく銭を持った人間というのは、それを稼ぐために対して苦労をしていないため、失う事にもそれほど抵抗がなく、景気よく遊びたがるものです。
歌舞伎町に対し、六本木は客層にうるさい傾向があります。
若い客や柄の悪い客は入れず、アウトローなニオイがする客は入れないのです。
これは六本木の伝統です。
歌舞伎町は一応「暴力団関係者お断り」のステッカーを張りだしていても、金融関係者お断りとは書いていません。
実際、そのスタンスで営業しています。
おそらく、2002年から稼がれた何百億円というお金のうち相当の額が歌舞伎町に流れていると考えてよいでしょう。
この時のバブルによってキャバ嬢の時給はどんどん上がっていき、ついには売上バック制を導入するお店が増えていきました。
その時期に歌舞伎町でキャバクラ店の店長をしていた人は、こう語ります。
いや、あの時は本当にすさまじかったですよ。
だって、1~2時間に何十万円も使うお客さんが急に増えたんですから。
それ以前は1~2時間で使っても数万円っていうお客さんばっかりでしたから。
それが普通なんですけどね。
だから、売上が一気に何十倍にもなる感じです。
それまではポイントスライド制のお店で1時間の指名で1ポイントみたいなことやってたんですけど、それじゃ女の子が納得しなくなったんです。
こんなに売り上げがあるのに、時給が200円刻みでちびちび上がっていくなんて納得がいかないって。
確かにそうですよね。
歌舞伎町のキャバクラは競争がすごくて、常に引き抜きはあってますからね。
引き抜き合戦なんかが起こることもありました。
ヤミ金とかオレオレ詐欺でお金がうなってますから、良い条件で引き抜けってなるんです。
良い条件で引き抜いても、それで十分に採算が取れますからね。
売上バック制っていうのは、引き抜きの条件で絶対でしたよ。
あの時期、キャバ嬢たちの給料はドーンと上がりました。
キャバ嬢たちの給料はこんな背景もあって高まっていったのです。
その結果、そのバブルが終わった今でも売上バック制は引き継がれています。
上流キャバ嬢の必須条件である売上バック制は、いまも変わっていないのです。
もしあなたが現在下流キャバ嬢であり、上流キャバ嬢になりたいと思っているならば、ぜひ歌舞伎町か六本木のキャバクラへの移転を目指してください。
上流キャバ嬢への道はそこから開かれます。