飴と鞭とくすぐりのキャバクラの世界

NO.1キャバ嬢や売れっ子キャバ嬢たちは真面目に仕事をこなしており、だからこそ人気ともいえるのですが、すべてのキャバ嬢がまじめに仕事しているかといとそんなことはなく、ルーズなキャバ嬢も多いのが事実です。

普通の会社で働いているならば、会社の命令には絶対服従が基本であり、遅刻や早退、無断欠勤などはクビを切られる十分な理由になることもあるほどあり得ないことです。

キャバ嬢の遅刻・欠勤でお店が困るワケ

遅刻や早退、無断欠勤などはクビを切られる十分な理由になることにより、勤務態度に多少の問題があるOLでも、遅刻・早退・無断欠勤をせずに真面目に出社するものです。

これは言うまでもなく常識の範疇のことでしょう。

しかし、キャバクラとなると月給のような固定給ではなく、能力給を加味した時間給です。

そのため、働いた分だけが給料になるのであって、逆に言えば行きたくなければ給料が減る代わりに行かなくてもよいとも考えることができます。

といっても、そのようなことをお店側が許すはずはなく、もし許してしまえばお店が回らなくなってしまいます。

キャバ嬢にとっては単に出勤しないことであり給料が減る以上の何物でもないかもしれませんが、お店にとっては販売機会の損失に繋がってしまい、ダメージを受けてしまいます。

具体的には、キャバ嬢が出勤しないことで以下のような困ったことが起きてしまいます。

指名客が来たときに困る

もし同伴によって遅刻すると分かっていたり、体調不良によって欠勤と分かっているならば、指名客が来たときに「今日は○時からの出勤です」とか「今日はお休みです」ということができます。

また、後日来店した際には「先日は申し訳ありませんでした」とフォローすることもできます。

しかし、キャバ嬢が無断遅刻や無断欠勤をしていれば、果たして来るのか来ないのか分からないため、対処できなくなってしまいます。

黒服は「今日はまだ来ていません」と言えば「では何時に来るんだ?」と聞かれて困ってしまいますし、「今日はお休みです」といえばあとで来た時に「嘘つきめ!」と怒られることになります。

かといって正直に「来るか来ないか分かりません」などと言うことももちろんできません。

お店の回転に支障がでる

お店がすいている時でも客を待たせることがありますが、これは出勤しているキャバ嬢の数と客の数が合っていない時に起こる現象です。

スナックならば団体の客に2~3人の女の子を付けることがありますが、通常のキャバクラでは客ごとに一人のキャバ嬢を付けるのが普通です。

出勤しているキャバ嬢が少なければ客一人にキャバ嬢一人を付けることができなくなってしまいます。

そのため、客に事情を説明して接客するキャバ嬢が少なくなることを説明して承諾の上で接客するか、空くまで(もしくは遅刻のキャバ嬢が出勤するまで)待ってもらう必要があります。

しかし、空くまで待ってもらうというのはキャバ嬢を遊ばせる状態を作ってしまいます(5人の団体客なのに空きのキャバ嬢が3人しかいなければ、2人のキャバ嬢が待機状態になるまでその3人は何もできない)。

また、それ以上に客が待つという事は稼げないという事であり、このほうがお店にとっては怖いことです。

このほか、待つことが好きな客はいないため、客が怒ってお店から離れてしまう可能性もあります。

そのような事態を防ぐためには、お店はキャバ嬢がその日は何人出勤するかをきちんと把握し、うまく回転させていかなければならないのです。

以上のような理由から、お店はキャバ嬢の出勤をきちんと管理する必要があります。

時間給であるとはいえ、お店のシステムによってキャバ嬢をある程度縛り、とにかく出勤する習慣をつけさせるようにしているのです。

 

 

キャバ嬢を管理する飴・鞭・くすぐり

キャバクラは普通、日曜日を定休日としている場合が多いものです。

これは、月曜日から仕事が始まるサラリーマンが日曜日に遊びに来ることはあまりないためです。

したがって、キャバ嬢たちは日曜日は休みであり、それ以外はオープンラストのフルタイム勤務をしていることが多くなります。

それだけではなく、同伴がある場合には入店時間が少し遅くなる代わりに客と会うための時間を取らなければならず、アフターがある場合にもサービス残業のように時間を割かなければなりません。

ちなみにフルタイム勤務は専業キャバ嬢の場合が多く、時給2500円でオープンラスト(19~2時まで)を週に6日間勤務すれば、週当たりの収入は10万5000円となります。

昼間はOLや学生をしているヘルプクラスのキャバ嬢の場合は週に3~4回程度、曜日を決めて出勤することになります。

そのようなキャバ嬢でも、決められた曜日に出勤しないというのは問題になります。

寝坊癖があってよく遅刻したり、仮病を使ってよくズル休みするようなキャバ嬢ならば、担当マネージャーが毎日電話をして起こしたり、自宅まで迎えに行って強制的に出勤させるケースもあります。

そこまでしてくれるのかと思うかも知れませんが、これは親切からやっているわけではなく、キャバ嬢を管理できないとなると男性スタッフも立場がなくなるからです。

しかし、そのようなフォローよりも、一般的にはお店によって管理が行われていることの方が多いです。

簡単に言うならば、その管理の手法は飴と鞭とくすぐりをうまく使い分けた管理です。

一般企業ならば労働基準法の問題が生じる管理手法ではありますが、非常に完成度の高い管理手法です。

キャバ嬢の給料は時間と指名本数に支配されています。

前者は1週間に何時間働いたかという事であり、労働時間に正比例してきちんと支払われます。

後者の指名本数は、指名料を客から別途徴収することで、その一部がキャバ嬢にキックバックされることです。

しかし、最近ではポイント制を導入しているお店が多数派となっています。

ポイント制とは以下のような制度です。

例えば、一人の客から指名されると3ポイント、延長1回につき1ポイント、同伴すると2ポイントなど、働きに応じてポイントが加算されて行き、そのポイントを集計していきあるラインを越えた時点でボーナスが支払われるというものです。

またお店によっては、時給がアップすることもあります。

つまり、頑張れば頑張るほど給料が増えるという仕組みであり、これによってキャバ嬢の頑張りを引き出すことができます。

指名本数を増やすためには同伴をしてもらえるように営業を行い、お店をできるだけ休まずオープンラストまで働くほかありません。

フリー客の席に着いた時には指名客の新規開拓のために必死の接客をしなければならず、その一方で既存の指名客の心が離れないようにそちらへの努力も怠ることはできません。

さらに、指名客の来店頻度を増やしたり、滞在時間を伸ばしてもらえるようにも営業をしなければなりません。

売れっ子キャバ嬢たちはこれを確実にこなしています。

キャバ嬢の日常に対して、不規則な毎日というイメージを抱く人も多いものですが、実際に真面目なキャバ嬢は規則正しい生活をしているものです。

むしろ、このような日々の仕事をこなしていくためには、規則正しくならざるを得ないのです。

つまり、お店による「飴」の存在によって、キャバ嬢たちは規則正しく働くことができているともいえます。

 

 

もちろん、飴ばかりでは成り立ちません。

そんな飴はいらないから今日は休むよ、というキャバ嬢が出てくるからです。

そこで必要なのが鞭です。

キャバクラにおいては、鞭は飴以上に効果があるようです。

その鞭とは、容赦なく給料カットを行う事です。

ポイント制を設けることによって給料アップには厳しいハードルが設定されていますが、給料カットは簡単に行われます。

この罰則があることによって、キャバ嬢たちにとっては給料をきちんともらうためには少なくともまずは出勤しなければならないという姿勢が徹底されることになります。

罰則はお店によって異なりますが、例えば以下のような形で給料カットが行われます。

  1. 30分遅刻したら1時間給料なしで勤務
  2. 1時間以上遅刻したらその日の給料50%カット
  3. 時間以上遅刻したらその日の給料100%カット
  4. 無断欠勤をしたら翌日から2日間の給料100%カット

などといった厳しい条件があります。

特に無断欠勤などの場合、次回の出勤が100%カットになるだけではなくそのまた次回の給料も100%カットとなるのですから完全なるマイナスです。

お店にとっては、そこまでしてでもキャバ嬢にきちんと出勤してもらう必要があるのです。

鞭は遅刻や欠勤だけに対して課せられるのではなく、同伴に対しても課しているお店もたくさんあります。

例えば、週に2回は同伴しなければならないと決めているのです。

これにも理由があります。

それは、同伴をすればキャバ嬢は必ず出勤することになります。

また、比較的暇な時間での来店を確保できるようになります。

このほか、同伴は指名とセットになっているため、このようなシステムがあればキャバ嬢は多くの指名客をゲットして同伴のお願いをしなければならなくなります。

もし、キャバ嬢たちのそのような努力が実らなかった(指名や同伴に繋がらなかった場合)としても、来店頻度を少しでも上げるためのよい営業になりますし、指名客の維持にも役立ちます。

つまり、同伴を強制することによって、

  1. キャバ嬢が必ず来店する
  2. 来店してもらえる
  3. 来店促進につながる
  4. 指名客(お店にとっては固定客)の維持につながる

という4つのメリットを享受できるようになるのです。

一般的なアルバイトでも、勤務内容に応じて時給はアップしていくものです。

しかし、給料がカットされるということはありません。

しかし、キャバクラでは週単位や月単位といった一定期間内での成果を反映するために飴と鞭を使い分けています。

そのため、たとえNo.1キャバ嬢でも指名本数が減れば給料はダウンしていきますし、勤務態度に問題があれば容赦なく給料カットとなります。

そうならないためには、給料維持のために必死で働かなければならないのです。

くすぐり

しかし、飴と鞭だけでお金を媒介したシステムだけでは、キャバ嬢たちはついてきません。

キャバクラ業界も不況の影響を確実に受けていますが、多くのキャバクラは常にキャストを募集しているため、自分のお店のシステムが厳しすぎると思えばすこし易しそうな所に移ってしまえばいいからです。

それを防ぐための3つ目の要素が「くすぐり」です。

キャバクラは非日常的な空間、すなわち異空間であることを売りにしています。

キャバクラは客に対して異空間としてスペースを提供して稼いでいるわけですが、この「異空間」ということは客だけではなくキャバ嬢に対しても効果がある要素です。

異空間で働けることや、非日常的な待遇で働けることはキャバ嬢にとっても異空間なのです。

では、具体的にはキャバ嬢のなにをくすぐるのでしょうか。

それは「虚栄心」です。

人間はだれしも虚栄心を持っているものですが、男性に比べて女性はより強く持っているものです。

キャバクラは異空間と書きましたが、それは言い方を変えれば「虚飾に満ちた空間」であり、その空間を演出するのがキャバ嬢の仕事です。

演出する役者ですから、源氏名という芸名まで付けています。

キャバクラでのキャバ嬢の服装や濃いめの化粧や派手な髪型などが虚飾の空間への演出の始まりです。

ショータイムなどはキャバ嬢の虚栄心をくすぐる最たるものでしょう。

店を盛り上げるだけではなく、自分を良く見せたいと思うものであり、ショータイムはキャバ嬢にとっては自分をアピールするための最大の舞台です。

お店そのものが小さな芸能界そのものであり、その中で活躍する一部のキャバ嬢がショータイムに出演できるようになるのです(実際、キャバ嬢の中には芸能界志望の女性は少なくありません)。

もっとも、お店によっては完成度の低いショーを行う場合もありますが、それでも衣装を着て歌って踊る本人たちは束の間のスター気分を味わうことができ、女性としての虚栄心をくすぐられることとなります。

実際、ショーメンバーになればお店の中での知名度も上がって指名本数も増えるのですから、虚栄心を満たすことは十分にできます。

多くのキャバ嬢がショーメンバーになりたいと思うのは想像に難くありません。

このほかにも、虚栄心をくすぐる仕掛けが色々あります。

例えば地下1階にあるお店に入る際、1階部分から地下の入り口に続く階段や通路には、指名本数が多い順にパネル写真が飾られていることがありますが、これもキャバ嬢たちの虚栄心をくすぐるものです。

さらに言えば、キャバ嬢の名刺は名前だけが書いているものよりも写真付きのものが多いのですが、これも虚栄心を満たすのに役立っていることでしょう。

また、キャバクラの客層に注目してみると興味深いことなのですが、キャバクラの客層にはキャバ嬢をちやほやしたがる指名客が多いことに気が付きます。

キャバ嬢たちに芸能人のような錯覚を与えることによって、金銭以外のメンタルな部分で満たされる職業という側面がキャバクラにはあるため、キャバ嬢たちは頑張ることができるのでしょう。

言い換えるならば、キャバクラは客が癒される場であると同時に、キャバ嬢も虚栄心を満たして満足感が得られる場所であるとも言えます。

 

 

うまくキャバ嬢のやる気を引き出すこと

飴・鞭・くすぐりなどと書いてきましたが、キャバ嬢をとりまくこれらのシステムは、結局のところキャバ嬢のやる気によって効果が表れるものであると言えます。

時給が上がる飴のシステムもキャバ嬢が現状でいいと思えば効果は表れませんし、鞭のシステムも「いつでもバックレてやる」と考えているキャバ嬢には効果がありません。

くすぐりもやる気のないキャバ嬢には響きません。

逆に言えば、飴・鞭・くすぐりはキャバ嬢のやる気を引き出すシステムでもあると言えます。

もちろん、キャバ嬢が仕事を面白くしたい、楽しみたいと考えていることが前提となりますが、これをサポートするためのシステムでもあるのです。

皆さんも経験があるかもしれません。

小学生や中学生の頃、テストで満点を取ったら好きな物を買ってあげると親から言われて頑張ったこと。

夏休みの宿題をきちんと終わらせたら夏休みの終わりに旅行に連れて行ってもらえると約束して頑張ったこと。

つまり、目の前にニンジンをぶら下げられて頑張った経験があると思います。

指名をたくさん取ったら賞金をあげるよ、と言われているのもこれと同じです。

このようなシステムを採用するにあたっては、お店側としては必ず達成可能な目標を設定することになります。

新人キャバ嬢に「今週は指名を3本とれ」といっても無理な話です。

しかし、キャバ嬢が慣れ始めたころに「今週は毎日1本の指名を取ればボーナスをあげるよ」と言われれば、それは頑張れば手に届くものであり、やる気を刺激することになるのです。

このように、低めのハードルを越させることによってキャバ嬢のやる気を奮い立たせ、達成を促し、達成によって自信を付けることを促していきます。

そうするうちに、ハードルが高いことも達成できるようになり、売れっ子キャバ嬢になっていくのです。

その意味では、マネージャーの飴・鞭・くすぐりが上手か下手かによってキャバ嬢の成長は大きく左右されるものであり、「絶対ムリ!」と思えるような要求をしてくるマネージャーがいるキャバクラでは成長することはできないのです。

ちなみに、このような飴・鞭・くすぐりはキャバ嬢だけではなく黒服に対しても行われています。

店長は黒服を操り成長させていくために、賞金を出したり、キャバ嬢の管理が行き届かなければ罰金を課したり、昇格を匂わせたりすることによってシステム下で管理しています。

そして、店長も本社から同じような条件で尻を叩かれており、キャバクラ業界で働く人々は経営サイドでない限り誰もが飴・鞭・くすぐりの管理下にあるのです。

私の知り合いのキャバ嬢がこんなことを言っていました。

前のお店は縛りが厳しすぎてやめちゃった。でも今のお店は店長がいいから2年も続いています。

キャバクラも、ある意味ではルーチンワーク(指名を取って、接客して、指名を繋いで・・・の繰り返し)です。

そんなルーチンワークの中で楽しんでやれることは原動力になりますし、また居心地が良いことにもつながります。

そのためには、お店とキャバ嬢の信頼関係が不可欠です。

キャバ嬢をうまく管理することができる店長やマネージャーがいるお店はキャバ嬢たちが成長して行き、客を惹きつけ、繁盛するのです。

ですから、これからキャバ嬢になろうとしている皆さんは、お店とキャバ嬢の信頼関係は重視すべき項目です。

キャバ嬢たちから不満ばかり出ているようなお店は長続きしません。

 

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