キャバ嬢の大きな仕事の一つは、指名客に営業をかけてお店に足を運んでもらうことです。
営業はキャバクラの世界だけではなく、あらゆるビジネスにおける重要な仕事です。
距離を縮める営業
企業の取引でいえば、取引先と親密な関係を築くことによって、取引を継続したり、取引量を増やしていくことができます。
単に商品を売り込むだけならば、営業担当者は要りません。
FAXやメールを利用して商品情報を送り付け、こちらが希望する条件を伝え、購入を待つのみです。
しかし、それでは商品が売れていくことはありません。
なぜならば、取引を成立させるためには、営業をかけることによって取引先との距離を縮め、より親近感を抱いてもらうことが非常に大切だからです。
企業間の交渉というのは、営業担当者と取引先の担当者の人間対人間の関係がどれほど深い・近いかによって成果が大きく変わるのです。
なぜなら、営業担当者と取引先担当者の人間関係の間に信用が生まれるからであり、信用が生まれれば「もっとたくさん買ってもいい」という結果につながるからです。
つまり、営業担当者の仕事の本質は商品を売りつけることではなく、取引先の信用を勝ち取る事ともいえます。
取引において信用が重要であることの証拠は、商談をみれば分かります。
もし信用が必要ないならば、なぜ営業担当者が変わることで売り上げがアップしたりダウンしたりするのでしょうか。
もし信用が必要なければ、極端な話ビジネスマナーを守れない三流以下の営業マンが新製品や特売条件の案内だけをしたとしても、売り上げが落ちることはないでしょう。
しかし、そんな営業マンに任せれば確実に売り上げは落ちます。
それは紛れもなく、信用がないからです。
つまり、「営業」とは言っても、実際には営業活動以外の部分で成否が決まることも多いという事です。
仮に私が美味しいと自認する清涼飲料水を開発し、コカ・コーラを追い抜きたいと考えた場合、どのような営業をすればよいのでしょうか。
私は飲料業界で無名であり、飲料メーカーの後ろ盾があるわけではなく、広告を出す財力もありません。
さらに、敵とみなすコカ・コーラは「コカコロナイゼーション(コカ・コーラ植民地化)」と言われるほどの売れ行きであり、全世界に販路を持っています。
これに対して私が開発した清涼飲料水は全国のコンビニに並ぶ可能性は万に一つもありません。
そのような場合に頼りとなるのは、自分の営業力とその商品の持つポテンシャルだけです。
営業する際には色々な小売店に営業電話やFAXをするのではなく、直接お店を回って注文を取った方が確実でしょう。
そのように営業して回り、試飲してもらって熱心に説いていけば、やがて取扱店舗が少しずつ増えていくことでしょう。
要するに、商品を売るためには人間関係と信用が重要な要素となるという事です(もちろん、商品自体が確かなものでなければだめです)。
本題以外の営業によって信用を獲得するといいますが、それはどんな部分で現れるかと言えば、簡単なのが世間話です。
取引先の担当者との世間話の中で共通の趣味が見つかって話が盛り上がったり、出身地が一緒でシンパシーを感じたり、真面目な生きざまに惚れこまれたりと色々なケースが考えられますが、実はこの様なたわいもないことが距離感を縮めてくれるのです。
だからこそ、営業マンは取引先担当者と商談を行うだけではなく、仕事を二の次にして一緒に食事をしたり、飲みに行ったりするのです。
それによって距離を縮めることができます。
不景気な昨今の接待では、経費削減のために取引を見込んだ接待ではなく、取引が成立したことへのお礼としての接待が行われることも増えていますが、それでもやはり一緒にサバの味噌煮定食を食べながら世間話を交わすことが大きな効果を持っているのは変わらないことです。
また、一緒に食事をするというのは自分の弱みを見せることでもあります。
なぜならば、他人の前で食事をするときには、自分の食べ方や食べ物の好みやテーブルマナーなどのすべてをさらすことになり、時に弱みを見せることにもなるからです。
これはキャバクラでも全く同じことです。
指名客に対して、いつでも「お店にきてほしいな」といった営業メールばかりでは客も「俺は結局彼女の成績のために通っているだけなのか」と失望することにもなりかねません。
そうではなく、メールの中でたまに世間話をしてみたり、相談ごとを持ち掛けてみたりすることで自分の弱みを見せ、距離を縮めることが効果的なのです。