人間は外見から得る情報を非常に重視する生き物です。
会話の内容や発する言葉以上に外見から大きな印象を受けるものであり、これが「人間は見た目が9割」と言われる理由でもあります。
キャバ嬢はお客さんの指名をもらうことが仕事であり、指名客を得るためにはフリーのお客さんについたときに気に入られる必要があります。
フリー客につく時間は5~10分くらいのものですから、話せる内容は限られるため、髪型、衣装、持ち物、化粧、態度、しぐさ、声のトーンなどといった会話以外の部分で第一印象をよくすることが大切です。
外見によって多くのメッセージを送らなければならないのです。
そこで役立つ一つのテクニックを紹介します。
それはミラーリングというテクニックです。
以前、私が体験したことをお話しましょう。
ミラーリングというテクニック
ある時、私はある大物社長を接待であるキャバクラに招待したことがありました。
その時はお店に入った時間が早かったこともあり、お店には私たち以外にはまだお客さんがおらず、私の社長の2人に8人のキャバ嬢がついて接客を受けることになりました。
8人のキャバ嬢は社長の指名を受けるためにそれぞれの方法で一生懸命に接客をしていました。
その中で一人のキャバ嬢は周りの勢いに押されてうまく接客できていないように私は感じていたのですが、社長はある時そのキャバ嬢に対して
そこの君、隣に来てくれるかな。
と言い、
君は熱心に話を聞いてくれるね。これからは君を指名するよ。
と言ったのです。
私も、他の7人のキャバ嬢もびっくりです。
指名されたキャバ嬢は乗り遅れたようにしか見えなかったからです。
それでも、社長は確かにそのキャバ嬢のことを気に入ったのでした。
これはなぜなのでしょうか。
一つに考えられるのは、社長の性質にそのキャバ嬢が一番マッチしていたからでしょう。
キャバクラの世界では、お客さんを見るとキャバ嬢のキャラが分かると言われます。
これは、結局のところお客さんが気に入るキャバ嬢は、キャラ的にお客さんが気に入るキャラであるという事です。
例えばアクの強いお客さんから多く指名されるキャバ嬢はアクが強く、几帳面なお客さんから多く指名されるキャバ嬢は同じく几帳面であり、陽気なお客さんに好まれるキャバ嬢は陽気な性格であるというように、性格が似ている傾向があるのです。
これは心理学的にも言われていることです。
アメリカの心理学者にニューカムという学者がいますが、ニューカムは交友関係に関する研究でこのことを明らかにしています。
この研究は学生寮を対象として行われたものです。
学生寮に入ってきた学生を半年間調査したところ、初めの頃は部屋の近い学生同士が仲良くしていたのですが、時間が経過してお互いの性格が分かるようになると、だんだんと性格が似ている学生同士が仲良くなることが分かったのです。
このことから、人間は考え方や態度や性格が似ている人同士が仲良くなりやすいことの証明となりました。
あなたにも経験があるでしょう。高校に入学し、中学校時代の同級生とも別れて様々な中学校出身の生徒が集まってクラスが作られたとき、最初は席や出席番号の近い生徒同士がなんとなく会話などを交わして仲良くなるのですが、時間が経つにつれて似た者同士のグループができてくるのです。
キャバクラにおいても基本的にこの原理が働き、性格の似たもの同士のお客さんとキャバ嬢は惹かれやすいものです。
フリー客についた5分や10分で性格が似ていることを伝えることができれば、そのお客さんから指名を受ける可能性が高くなります。
ならば、そもそも性格が似ていなかったらダメなのでは?と考えるかもしれませんが、そこはテクニックの使いどころです。
性格や態度や考え方を似せればよいのです。
と言っても、初対面の相手の性格など分かるはずもありません。
そこで、「ミラーリング」というテクニックが活きてきます。
ミラーとは鏡のことであり、ミラーリングというテクニックはお客さんの行動を鏡に映すように行動を真似するというものです。
例えばお客さんが飲み物を飲んだら自分も飲み、お客さんが前かがみになったら自分も前かがみになるというような行動をとります。
これによって、「あなたは私と似ています」というメッセージを送ることができるのです。
フリー客につくごく短い時間では大した会話はできませんが、このテクニックによってお客さんから好かれることができます。
上記のキャバ嬢も、このテクニックを実践していたのです。
このことは、色々なところで観察することができます。
カフェやレストランなどで食事をしているカップルがいれば、ぜひ観察してみてください。
食べ方や座り方が似ていることが結構あるものです。
これは、態度や性格が似ているからこそ惹かれあってカップルになったという部分がかなりあることの現れです。
フリーのお客さんに接客する時には、このテクニックをぜひ使ってみてください。
もっとも、全てを猿まねしてはいけません。キャバ嬢には取るべきではない姿勢もあるからです。
お客さんが足を組んだからといってキャバ嬢は足を組むのはNGですから、その場合には体のどこかをクロスさせます。
お客さんが大股開きで座ってもキャバ嬢にはそのような格好はできませんから、その時は腕を開き気味にします。こ
のような応用を身に着ければ、お客さんの行動をうまくミラーリングできるようになります。
また、ミラーリングのテクニックはお店以外の場所でも使うことができます。
例えば同伴で食事をした際には、お客さんと同じ食べ物や飲み物を注文することによって、お客さんは似た者同士だと認識するようになります。
ミラーリングを行う際には、以下の二つの注意点を忘れないようにしてください。
まず、左右が反転することです。お客さんが鏡を見ているように動かなければなりませんから、お客さんが右手を上げた際にはあなたは左手を上げる必要があります。
と言っても、これはあなたから見てお客さんが鏡映しになっているように動けばいいだけですから、それほど難しいことではないでしょう。
二つ目の注意点は、お客さんが真似されていることに気付かないようにするという事です。
相手に気づかれてしまえば、しきりに真似をされることを嫌うお客さんもいるので、自然な形で実行する必要があります。
ミラーリングというテクニックは比較的よく知られているものです。
この記事を読んでいる皆さんの中にも、恋愛のハウツー本などで異性の気を引くテクニックとして紹介されているのを読んだことがある人もいることでしょう。
また、このような当たり前で単純なテクニックが本当に効果があるのか半信半疑の人もいると思います。
しかし、上で紹介した、社長に指名されたキャバ嬢のようなケースもあるとおり、意外に効果がある方法としても有名です。
お客さんの気を引くためにも、皆さんも実践してみることをお勧めします。