新型コロナウイルスの拡大防止のために、政府は緊急事態宣言を発令し、外出の自粛や営業の縮小・休業を要請しています。
客足が遠のいたことによって、飲食店への打撃は非常に大きく、キャバクラも例外ではありません。
むしろ、キャバクラなどは不要不急の最たるものですから、売上が急減しているケースが非常に多いです。
お店の経営が苦しくなれば、そこで働くキャバ嬢の収入も減ってしまいます。
これにより、生活が苦しいキャバ嬢も増えていることでしょう。
そこで本稿では、政府が実施している支援策のうち、キャバ嬢でも利用できるものと利用できないものについて解説していきます。
収入が減るキャバ嬢が急増
新型コロナウイルスの感染拡大は峠を越したとする意見も一部にはあるものの、まだまだ収束の見通しは立っていません。
これまでも、緊急事態宣言に伴う自粛要請の影響によって、キャバクラ店の経営は圧迫されてきました。
なんといっても、キャバクラは一般的な飲食店とは異なり、公的支援も受けにくい業種です。
部分的な緩和によって支援を受けられることも増えていますが、他の業種に比べて経営が苦しいことは間違いありません。
また、緊急事態宣言の解除も先延ばしになっている状況であり、集客に苦しむ時期が長期化する可能性も十分にあります。
苦しいのはキャバクラ店だけではありません。
そこで働くキャバ嬢も苦しい状況になっているはずです。
というのも、キャバ嬢の給与システムが特殊であるためです。
キャバ嬢の給与は、固定時給に指名料や売上のバックを加えたものです。
出勤すれば固定時給は稼げるため、完全出来高制の風俗嬢などよりいくらか良いものの、お客さんが少ないため出来高の部分を稼ぐことが難しくなっています。
また、シフトを減らされているキャバ嬢も少なくありません。
出勤の機会が減ると、固定給の部分でも稼ぎが減ってしまいます。
このような理由から、新型コロナウイルスの影響がなかった頃に比べて、収入が大きく減少するキャバ嬢が増えています。
普段からたくさんの指名を受け、稼ぎがよく、貯金もしていたキャバ嬢であれば、そもそもの稼ぎが良いのですから、すぐに生活が苦しくなることはないでしょう。
しかし、そのような余裕があるキャバ嬢はごく一部です。
とりわけ、シングルマザーのキャバ嬢などは、一斉休校の影響で出勤しにくくなり、ますます生活に余裕がなくなっていることと思います。
そのようなキャバ嬢は、政府の支援を積極的に活用すべきです。
キャバ嬢は仕事が特殊であるため、一般の人と同じように支援を受けられるわけではありません。
それでも、利用できる支援制度はあるのですから、使えるものは使っていく姿勢が大切です。
キャバ嬢でも利用できる支援
まず、キャバ嬢でも利用できる支援から見ていきましょう。
緊急小口資金
立場に関係なく、誰でも利用できるのが緊急小口資金です。
これは、何らかの理由によって生活が苦しくなった人を支援する制度であり、セーフティネットとしても機能しています。
緊急小口資金は、「申請すれば全員に10万円を給付」というように、申請すればお金をもらえる制度ではなく、あくまでもお金を借りられる制度です。
しかし、最大で20万円を借りることができ、2年間無利子となっているため、返済の負担も小さく、生活費に困っているキャバ嬢には利用価値の高い制度といえます。
この制度があることを知らずに苦しむ人も増えているため、政府は緊急小口資金の周知活動に力を入れています。
少なくとも、どこからかお金を借りたいと思っているキャバ嬢は、まず緊急小口資金から借りるべきです。
生活が苦しいキャバ嬢の中には、消費者金融などから借りることで、生活費をまかないたいと考えている人もいるはずです。
しかし、消費者金融の金利は年18%を基本としており、返済はラクではありません。
返済が遅れると、いわゆるブラックになる危険もあります。
さらに、初めて消費者金融を利用する人は、多くても50万円までしか借りられず、最初は数十万円の借入枠からスタートすることも多いです。
高金利で数十万円を借りるよりも、まずは無利子で20万円まで借りられる緊急小口資金を利用すべきです。
総合支援資金
緊急小口資金のほかに、総合支援資金という制度もあります。総合支援資金も、お金を貸す制度です。
失業などの深刻な理由によって、緊急小口資金だけでは生活できない人を支援する制度であり、最大60万円まで借りることができます。
返済期間も10年間と長く設定されているため、生活が非常に厳しいキャバ嬢は利用を検討してみると良いでしょう。
なお、緊急小口資金と総合支援資金は、あくまでも生活困窮者を対象とする制度であるため、申請の際には通帳のコピーなどを提出し、生活が苦しいことを証明する必要があります。
したがって、生活にある程度余裕があるキャバ嬢は、利用できない可能性が高いです。
逆に言えば、生活が苦しい人を確実に支援するための制度ですから、生活が苦しいキャバ嬢は何らかの支援を受けられるはずです。
気になるキャバ嬢は、社会福祉協議会に相談してみてください。
一部のキャバ嬢が利用できる支援
最近さかんに新聞を賑わせている「休業手当」というものに興味を抱くキャバ嬢も多いはずです。
休業手当とは、経営が苦しい会社が休業し、出勤できなくなった人が会社からもらえるものです。
多くの会社では、休業の際に休業手当を支払うことを法律で義務付けられています。
営業を完全にストップするのではなく、従業員の勤務を部分的に減らす「一部休業」でも、休業手当は支給しなければなりません。
お店からシフトを減らされているキャバ嬢は、普通の会社であれば休業手当をもらえる立場にあるといえます。
しかし実際には、多くのキャバ嬢は休業手当をもらうことはできず、一部のキャバ嬢に限ってもらえる可能性があります。
キャバ嬢は個人事業主
会社が休業手当の支給を義務付けられるのは、一般的な雇用契約を結んでいる場合に限られます。
お店とキャバ嬢の関係は、普通の雇用契約とは異なります。
お店はキャバ嬢を個人事業主と見なし、業務委託契約を交わしているのです。
表面上は「使用者(お店)と労働者(キャバ嬢)」の関係に見えても、実際には「事業主(お店)と事業主(キャバ嬢)」であるため、お店はキャバ嬢に休業手当を支払う義務がないのです。
このため、お店がシフトを減らすことで収入が減っていても、キャバ嬢は休業手当をもらうことはできません。
シングルマザーのキャバ嬢ならもらえるかも
ただし、シングルマザーのキャバ嬢であれば、お店ではなく国から休業補償をもらえる可能性があります。
一斉休校の影響により、子供が自宅に待機せざるを得なくなり、そのために仕事ができなくなっている個人事業主が増えています。
このような個人事業主への支援として、政府は1日当たり4100円の手当を支給しています。
キャバ嬢の中にはシングルマザーも多く、一斉休校のために出勤が難しくなっている人もいると思います。
そのようなキャバ嬢は、申請することによって休業補償を受けることができます。
今後、カリキュラムを工夫するなどして再開に踏み切る学校も増えてくるでしょうが、地域によってはまだまだ休校が継続する可能性もあります。
上記の通り、キャバ嬢は個人事業主ですから、休校の影響を受けているキャバ嬢は、休業補償を申請するのがおすすめです。
キャバ嬢は利用できない支援
最後に、キャバ嬢が利用できない支援を見ていきましょう。
ここから紹介する制度は、どう工夫しても利用できないものです。
利用できる抜け道を模索するよりも、さっぱり諦めてしまって、利用できる支援に集中したほうが賢明です。
持続化給付金
まず、5月から始まった持続化給付金ですが、キャバ嬢はこの給付を受けることができません。
持続化給付金は、新型コロナウイルスの影響によって事業の継続が難しくなっている中小企業や個人事業主を支援する制度です。
倒産する事業主が増えてしまうと、新型コロナウイルス収束後の経済の回復が遅れてしまうため、それを防ぐことが目的です。
繰り返す通り、キャバ嬢は個人事業主に属しています。
持続化給付金では、個人事業主に対して最大100万円の支援金を給付しているため、仕組みとしてはキャバ嬢でも利用できるものとなっています。
それでも、ほぼ100%のキャバ嬢は利用できません。
なぜならば、持続化給付金は「去年から売上が大幅に減少している事業者」を対象としているためです。
実際に収入が大幅に減っているキャバ嬢ならば利用できそうなものですが、キャバ嬢のほとんどは確定申告をしていないはずです。
しかし、税務署がキャバ嬢ひとりひとりに適切な納税を求めることは現実的に不可能ですから、確定申告をしないキャバ嬢に対しても、税務署も見てみぬふりをします。
確定申告しなくても問題にならないのですから、真面目に申告して税金を支払うよりも、申告せずに税金も支払わないほうがよく、ほとんどのキャバ嬢は確定申告をしていません。
しかし、「確定申告をしていない」ということは、「去年の売上を示す資料がない」ということであり、持続化給付金の決め手となる「去年に比べて売上が減少していること」を証明できません。
したがって、実際に収入が大幅に減少しているキャバ嬢でも、確定申告をしていないために持続化給付金をもらえないのです。
もちろん、きちんと確定申告をやっているのであれば、個人事業主として申請することで、キャバ嬢も持続化給付金をもらえます。
しかし、そのようなキャバ嬢は例外中の例外であり、基本的には利用できないと考えてよいでしょう。
失業保険
最後に、失業保険ももらえないことを知っておきましょう。失業保険とは、勤め先がつぶれたり、クビになったりして失業した人を支援する制度です。
キャバ嬢も、働いているお店がつぶれたり、お店をクビになったりすれば、失業状態になります。
しかし、残念ながらキャバ嬢は失業保険をもらうことができません。
これも、キャバ嬢が個人事業主であることが原因です。
個人事業主は、特定の勤め先で働いているのではなく、自分で事業を営んでいます。このため、
お店がつぶれた→「勤め先が倒産して失業した」ではなく「取引先が倒産した」
お店をクビになった→「解雇されて失業した」ではなく「取引先から業務委託契約を打ち切られた」
とみなされます。
つまり、キャバ嬢は失業しているのではなく、個人事業主として事業を継続している状態とみなされるため、失業保険をもらえないのです。
実際には失業している状態でも、失業保険はもらえません。
もし、お店がつぶれたりクビになったりしたキャバ嬢は、すぐに新しいお店を探す必要があります。
もちろん、現在の状況では、新しいお店がなかなか見つからなかったり、見つけてもあまりシフトを入れてもらえなかったり、色々な難しさがあると思います。
そのような人は、緊急小口資金などを利用しながら、感染が収束していくまでの時間稼ぎを考えていきましょう。
まとめ
本稿で解説したとおり、一般の人ならば問題なく利用できる支援のうち、キャバ嬢が利用できるものは限られています。
これは、主にキャバ嬢が個人事業主と見なされることが理由です。
とはいえ、キャバ嬢が利用できる支援が全くないわけではありません。
利用できる支援は積極的に活用していきましょう。
新型コロナウイルスが収束に向かえば、お客さんはまた戻ってきてくれるはずです。
その時に備えて、お客さんともしっかり連絡を取っておくことが大切です。